接木的パロディの可能性に就ひて

文 / たかはしびわ

切り抜きポロックさん ペンキ・ジェッソ・ボンドで下塗りしたシーツ、切り抜き、200×170㎝、2012年制作

 美術の教科書に載せられし美術史の図は大抵、系統樹様のものとして描かれをり。
パロディは、美術史に於ける本流なりて、美術発展の原動力なることは、前号分枝紙上にて「パロディ本質論」として既に述べたり。
すなはち、美術史系統樹に於ひて、或る枝よりさらに枝分れしたるは、先行作品の何らかの要素を変へし故なり、パロディしたる故なり。
また、遠き過去の美術作品を参照し制作さるることも誠に多し。例へば、シュメール彫刻の様式を以て日本神話を彫刻したる中村直人の「草薙剣」等なり。
枝分れに対し、接木とでも申すべきか。
 或る種の美術史上の行止りと言へる様な作品、つまり枝分れも接木もされ難き作品は幾つも在り、そこに意図して参照に留まらぬ接木をしてみるは、美術発展の為に良き試み也(勿論、参照は立派なパロディ也)。
 我が「切抜ポロックさん」なる作もまた、非参照的接木的パロディ也。
 ポロックは自身にても行止りを感じ、垂し技法に切抜を施す試みをしたるも遂に展開すること能はず、死後「カット・アウト」と称して、妻たるクラスナーの手に拠りて多少の加工を施されし後、発表されたり。
参照的パロディなれば、我がペンギンの形に切抜くといふ道もありしが、此度はその道は取らず、垂し以外の全ての白地を切抜くといふ挙に出たり。
 我が「切抜ポロックさん」は、ポロックの行止りを、ポロックに同ず垂しに切抜といふ技法を用ひてしかし同ぜぬ、更なる展開の一つの可能性を示すことを成したりと自負す。
 伸び悩む枝に接木して新たな枝と成すことを得と自負するもの也。

たかはしびわ Biwa Takahashi 画家 1972年東京都生まれ 長野県在住 
長野二紀会会員 日本ペンギン党党員
1997 武蔵野美術大学油絵学科卒業 2006.7~ 『週刊さくだいら』にて『さくだいら美術探訪』隔週連載(2008年7月から4週に一度の掲載)2007 信濃毎日新聞短歌欄イラスト担当
たかはしびわのページ