慰みの俳句に就いて

のべのおくり(2018)アクリル、F60キャンバス

文・絵画 / たかはしびわ

曲を作ること、いにしへの言は、非家なれど慰みなり。去年卯月より俳句を始めたり。営みにはあらざる、慰みなること、いふもさらなり。

 

    ペンギンは何を弔ふ夏の空 蕪

     先つ年、二紀展にしつらへし「のべのおくり」を詠じし句なり、蕪は俳号なり。
     去年まで露も詠まざりし、非家なれども、おほきに楽しびたり。

 
春の朝空を開いて飛ぶ鴉

光満つ新緑といふ名の絵具

ペンギンの絵具箱にはイチゴオレ

更衣絵具の染みに再会す

写真一葉を引き裂き蕎麦旨し

明らかに何もない町新茶飲む

美しい岩を母の日にあげます

夏野にはプラモデルを埋めてきた

キャタピラが潰せし蟻に名は有りや

蛾は影のような麟粉残し落ち

最期かと事件のような牽牛花

踊踊踊りおどりおんどりゃあ

色々な記念日忘れてる残暑

菊人形市場でひとり舌を噛む

月光の冷たい距離を通り来る

斜めなる案山子と遊べひとごろし

きりぎりす宿題が千ページとは

こうなればもう笑い茸しかない

いつまでもその他大勢流れ星

枯葉踏む乾いた音の骨密度

うつむきて何を祈るや夜鷹蕎麦

この雨はじき雪になる星になる

隼よ抱きしめて欲しくはないか

柔らかい毛糸編む手で我が子打つ

美しい咳ひとつきっと許される

クリスマス核のボタンは誰が押す

血まみれの熊が飲んでるミルクティ

埼玉とアウシュビッツに霜柱

いま渋谷なまはげに囲まれている

何故と問ひ怒れる如き雪おろし

雛祭ヤバイ地球の幼子よ

たかはしびわ Biwa Takahashi
画家
1972年東京都生まれ 長野県在住 
長野二紀会会員 日本ペンギン党党員
1997 武蔵野美術大学油絵学科卒業 2006.7~ 『週刊さくだいら』にて『さくだいら美術探訪』隔週連載(2008年7月から4週に一度の掲載)2007 信濃毎日新聞短歌欄イラスト担当
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展覧会の予定
・第14回春季二紀展 2019.3.25~3.31 東京都美術館
・たかはしびわの現代アート 美術館がペンギンでいっぱい 2019.4.27~2019.7.7 志賀高原ロマン美術館