パロディ本質論

文・画像 / たかはしびわ

 

全人類を全ペン類に置き換へて戯画を描きし我なりて、パロディも又戯画の一種なれば、我も手を染めたり。
 我思ふに、元となる作品を構成したる様々な要素のうち、一つ二つを変ふることによりてパロディは成立す。
 時代、場所、天候、持物、動作、などを変へて描かば、パロディとなるらむ。
 例へば、モネットの『日傘をさすをんな』に於いて、晴れたる天候を土砂降りに変ふれば即ちパロディたるを得。
 抑々(そもそも)我がペンギン戯画もまた、全人類を全ペン類に置き換へたる時点で既にパロディ也。
 プラトン曰く、芸術は現実の模倣也と。
 しかし我は言ふ、何かを変ふればパロディと成るなれば、芸術は現実の何かを変へて表現したる故に、芸術は現実のパロディ也と。
 三次元のものを二次元に変ふれば絵画なり、素材を変ふれば彫刻なり。
 色を自由に変ふるを以て野獣派が生まれ、形を自由に変ふるを以てデフォルマシオンとなす。
 美術史は、様々な形で芸術が現実の模倣から離れ、愈々(いよいよ)パロディの度合が進み来たることを証したる。
 斯くの如きパロディ史観に基づかば、パロディとは即ち芸術の根幹にして本質也と言ふべからむ。
 パロディは芸術の傍流にあらず、本流也。

デュシャンにひげを描く 油性ペン、ポストカード、2011年制作

たかはしびわ Biwa Takahashi 画家 1972年東京都生まれ 長野県在住 
長野二紀会会員 日本ペンギン党党員
1997 武蔵野美術大学油絵学科卒業 2006.7~ 『週刊さくだいら』にて『さくだいら美術探訪』隔週連載(2008年7月から4週に一度の掲載)2007 信濃毎日新聞短歌欄イラスト担当
たかはしびわのページ