夢日記

画像(スケッチ)・文 / 徳永雅之

夢日記「父と居る部屋」 1992年頃?

 父が僕の部屋にやって来て言った。
「カレー食べるか?」
「食べる」
 部屋には既に温めてあるボンカレーのパックが2つ立ててあり、既にパックの封が開いていた。
 父は僕に背中を向け窓ガラスに何かを描いていて、僕と話しをしながらも決して手を休めなかった。左側に体を動かした時、その体で隠れていた、白で描かれた植物の絵が見えた。

 何気なく部屋を見回したらエロ本が4、5冊、無造作に置いてあることに気づいた。父が後ろを向いている間にそっと隠した。


夢日記「プレゼント」2012/12/18

 知人から郵便が届いた。封を開け、中を見ようとしたら、バラバラと何枚もの紙がすべり落ちた。ショッキングピンクの文字で彼女のバンドのライブの概要がびっしりと書かれた紙。封筒の中には更に封筒が入っている。封を開けると、そこには生きたトカゲが入っていた。ここは学生達が大勢居る場所なので逃げられたら大変だ。しかし、トカゲはとてもおとなしくて、封筒の外に出ようとするような素振りも見せなかった。
 封筒の中には、他にも見た事も無い古代生物のような羽虫や珍しい甲虫ばかりが入っていた。彼らをどうすれば死なせずに飼っていけるのだろうか。

 知人からのプレゼントの小さい生き物たちは、その後もどんどん繁殖し増え続けていった。飼いきれない生き物はペットショップに持っていった方がいいなと思った。

 結果的に、沢山の生き物は、木や土や枯葉などが配置された大きめのアクリルケースの中で、それなりに良いバランスを保ちながら住んでいた。


夢日記「芸大のやつら」2017/12/28

夢日記「藝大のやつら」2017/12/28

 夜中に時々目が覚める。腹が減ったので台所でビーフンを作ろうとするが、ものすごく眠くて、どこまで作ったのか忘れそうだ。大学の同級生のケンジが寝室からこっそりギターを持ち出している。
「弾くなよ、うるさいから」彼は聞こえないふりをしている。
 外はまだ薄暗い。しばらく寝て目が覚めたら、新旧の藝大生が何十人も、勝手に家に上がり込んで飲んでいた。これでは妻も眠れないではないか。和やかなムードに水を差すことにした。
「お前ら、なんだよ。人のうちに勝手に上がり込んで。ふざけるな」
 みんな神妙な顔をして固まっている。中には教授か、大先輩なのか、おじいちゃんみたいなのも居て、一人で飲んでいる。とりあえず微妙に会釈しておいた。こいつらはケンジが呼んだに違いない。
「ケンジ、ケンジ、居るだろ?ちょっとこい」
 彼は幼い娘を抱いて来た。
「その子の顔を見るとお前を叱れないので、俺が預かる」
  可愛い娘を抱っこしながらケンジを厳しく叱った。彼は申し訳無さそうにしている。父親をさんざん叱った後、娘は僕に抱かれながら眠ってしまった。寝室に行き寝かせ、その子の隣で僕も眠った。

 家には大学の同級生のマサミやヨシヒコも来ていた。
「みんなさ〜、歳とっても印象が変わらないのがうれしいよね」とヨシヒコはにこにこしている。マサミも嬉しそうだ。
 しかし部屋にたむろしているのは面識のない奴らばかりで、子供連れも多い。僕と妻が寝ている部屋には大型テレビが二台も持ち込まれ、イヤホンをつけて何か観ている女の子もいる。彼らは自分の家から勝手に不要品を持ち込んでいた。大量のハンガーやらレコード。VHSのビデオ(名画系が多い)は棚ごと持ち込まれ、掃除機は一箇所に何台も置かれていた。元々物が多い僕の自宅は更に物だらけになった。
 藝大の奴らは勝手に上がり込んでは悪いと、お礼のつもりで持ち込んでるのか、この機に乗じて不要品を処分したかったのか微妙なところだ。

 ふと、ビーフンを作っている途中だったことを思い出した。
広い台所に、これまたいろんな食材が持ち込まれている。ビーフンはゴミ箱に捨てられていたが、炒めていた具材は、フライパンから出され、綺麗に並べられている。ケンジの娘が、
「すみません、私を車で送って下さい」とお願いしに来た。
 (あれ?少し大きくなった?)ケンジは仕事に出かけたばかりで不在だ。
「後でね」

 寝室の窓を開けたら、とても古そうな能舞台が目の前に現れた。今まで住んでいて気づかなかったが、家の隣は神社だったのだ。能舞台の下は池になっていて、なかなか良い景色だ。その気になれば、部屋の窓からすぐに池まで出られそうだ。

 ケンジの娘がそろそろ送って欲しいと呼びに来た。もう高校生くらいになっている。今着ている部屋着ではまずいから、外に履いていけそうなパンツを探す。見つけたパンツはみな黒光りする汚れがあったり、油を含んだようなホコリになっていて、履いて出られそうなものが一つもない。とりあえず、マシなものを一つ選んで履いた。

 玄関に行くと、娘が座って待っていた。
もう20歳も過ぎたような雰囲気で着ている服も大人っぽい。僕を待っている間に一旦外に出てきたと言う。タバコを吸いに行ったのかもしれない。娘と共に出かけようとするが僕の靴が見当たらない。玄関にあるのは見覚えのない靴ばかりで、勿論それは部屋にいる誰かのものだ。
「マサミさんが『徳永に』って靴を置いていきましたよ」と娘。
 モカシンとまだ新しそうな、見たことのないジャングルモック。ジャングルモックは革製でロールパンのような色と艶の靴だ。少し大きめだが、とりあえず履くことが出来て喜んでいたら、左足を上げた途端、靴底の半分がボロリと取れた。
「だめじゃん」




夢日記「パノラマな風景を歩き回る」2019/05/04

 僕はどこかの道を歩き回っている。複雑な道で自分のいる場所がわからなくなるから、iPhoneで地図アプリを拡大して見たりしながら歩いている。ここは佐世保の地形を極端にした様なアップダウンの多い土地だ。砂岩で出来た岩山の切り通し、この先に丁字路があって右に曲がる…などと、うっすらした記憶のようなものが現れては消える。そしてまた同じところに出てきてしまう。僕はどこに向かっているのか、どこへ行きたいのかがわかっていなかった。とにかく目の前のパノラマ的な風景の中を、地図アプリを頼りにあっちだ、こっちだ、と歩いているのだ。

ようやく行き着いた場所は、大人一人がかろうじて登ることが出来る狭い階段だった。僕は階段をぐるぐる、かくかく、螺旋状に登って行く。ここはきっと、外から見ると多角形の塔なのだろう。狭すぎる階段、壁がとても近い。息苦しくなりそうな空間だ。登りきったかどうかはわからない。


夢日記「鳥 」2019/07/10

 山あいにある小さな農村。周りは畑ばかりなのに、歩いていてもそこに住んでいる人をあまり見かけない。そのうち、村人はひっそりと隠れるようにして住んでいるのだと僕は気づいた。

 みすぼらしい身なりの一家。母親や小さな子供達は髪の毛はボサボサ、汚れた体や衣服のままだ。父親は見当たらない。陽の光があまり入らないこの家の小さな窓から差し込む光。木でできた何か大きめの道具をうつ伏せで抱き込むような姿で父親は居た。頭部は無く、首から皮のようなものがだらりと長く垂れている。この一家はこの男を上から少しずつ食べながら暮らしているに違いない。

 あまり姿を見せない村人は、鳥を恐れていることがわかった。普段はその姿を目にしない鳥は、何かのきっかけで続々と現れる。鯖のような模様、尻尾はキジに似て頭の形は鋭角的な形をしている。鳥は2,3羽草むらに現れたと思うと、あちこちから飛んできて、あっという間に地面に空に増え続ける。僕は恐ろしくなって彼らを刺激しないよう、静かに誰かの家に入った。幸い何も起こらずに済んだ。

 岩山のふもとの地形を利用した水族館に行ってみた。建物はなく、掘って水を溜めただけのようなプールが何か所もある。天気が良く、水は綺麗なエメラルドブルーで、素朴な美しさに見とれる。ウエットスーツを着た飼育員らしき人が数人居るのを確認しながら斜面を降りていき、プールに近づいた。遠くから見た時には美しいと思ったプールには、台風でも通り過ぎたかのようなゴミが浮き、イルカのような生き物の死体がいくつも浮いているのが見えた。遠目には平和そうに見える、この水族館に何かが起こった事は明らかだった。あの鳥の群れの仕業なのだろうか?

 暫くして軍隊がやってきた。我々をここから救出するという。だが、どうやら何らかの基準があり、救出する人間を選別しているようなのだ。ナチスの様な雰囲気を感じ取り、警戒する。


夢日記「衣装」2019/09/06
 女性が、鎖かたびらのような衣装を身につけている。重量感があり、とても派手だ。今度は僕が身につける番らしい。
 これを身にまとうには順番がある。まずはメッシュをすっぽり被り、次に黒いチューリップハットのようなものを誰かに被せられる。最後に重たい金属製のメッシュ。
 周りにいる人は固唾を呑んで僕を見ている。




夢日記「早とちり先生」 2020/01/07

 まるで学園ドラマのシーンのような晴天のキャンパス。建物の前の芝生でくつろいでいたら先生が親しげに声をかけてきた。眼鏡をかけた先生は若くて爽やかだ。先生は「生徒の為に」あるハンドルネーム〇〇を名乗り、教師であることを隠しながらSNSで活躍していたある男性の話をしてくれた。その話は結構面白かったが、僕には生徒の為という目的を外れて、ただSNSにハマってしまった教師の話にしか聞こえなかった、などと感想を伝えると、その男性はあくまで教育を目的としてやっていたのだと、先生は穏やかに主張した。
 「そういえば僕も×××××(漢字の当て字、5文字くらいの面倒くさいやつ)というハンドルネームでやってるんだけど…」
先生はこちらから聞きもしないのに自分もSNSをやっている事を生き生きと話しだしたかと思うと
「お父さんは君のことをどう思ってたのかな?」などと、唐突な質問をして来る。それに答えようとする僕には構わず、手に持ったカプセルの薬を僕に見せるように(この薬を飲まなきゃ)と目で合図してどこかへ行ってしまった。なんとなく、彼が手にしていたのは精神薬なのかな、と思う。あまり深く考えたりせずに、僕はそのままその場所で彼を待っていた。話の途中だったから。
(先生、ちゃんと薬は飲めたのだろうか?)

 再び先生が現れてこう言った。
「ところでご両親は君のピアノの事はどう思ってるのだろう?」
 (先生、僕が演奏する楽器はドラムなんです…)


夢日記「ハンドメイド色鉛筆」2020/02/04

 古民家で70歳くらいの女性が、手製の色鉛筆を作りたいと僕に相談をしてきた。僕らは土間で立ち話。土間に面した和室は、老人や知的障害者の人達を受け入れている施設が使っている。そこでは手作業で色鉛筆を作っているのだ。
 僕は和室に上がり、運営している女性に話を聞くことにした。
芯を作る為、硬そうなブロック状の木型の細く丸い穴に、顔料を混ぜた熱い液体を流し込む。説明してくれた女性は色鉛筆作りの仲間を増やしたいと思っているようで、とても丁寧に教えてくれた。初めは興味を持っていた僕だったが、思っていた以上に大変な工程の説明を聞いていると、気が遠くなっていくようだ。

 結局、ここでの色鉛筆作りは、簡単に折れたり割れたりしないような軸木の選び方など、職人的な要素が強く、いきなり素人が簡単にできるものではないことがわかった。自分で色鉛筆を作りたいと相談してきた女性は、土間で僕を待っている。最初から一緒に話を聞くように促すべきだったと思いながら、素人にはかなりハードルが高いという自分の主観を交えながら、彼女に説明を始めた。


夢日記「緊張の交差点」2020/02/04


 渋谷のハチ公前スクランブル交差点のような広い交差点の四ヶ所で、大勢の人たちが信号待ちをしている。皆、渡るタイミングを計ってゆらゆらと動いている。全員が青信号で渡るタイミングを失い、信号は赤になってしまったが、車も渡ろうと構えている歩行者の気配を察知しているのか、発車するのをためらっている。緊張がピークに達した。

(もうここで渡るしかない)

 僕は思い切って先頭を切り交差点を渡った。
その瞬間を待っていた歩行者全員が一気に渡り始めた。


夢日記「雪」 2020/05/02

 夜、僕は建物の二階で何かを待機していたが、すぐにここから出なければならなくなった。ガラスの入っていない縦長の開口部から外を見ると、いつのまにか牡丹雪が舞っていて、視界の9割は降っている雪と積もった雪で真っ白だ。地面の白くこんもりとした塊は、わずかに覗く暗い緑で、そこが植え込みなのだとかろうじてわかる。焦っているわけではなかったが、僕は迷うこと無く真っ白な地面に向かってダイブした。顔の周りは全部雪。ちっとも痛くなかった。

夢日記「白い霧」2020/06/19


 見晴らしの良い丘から見下ろす風景はなだらかな地形で、すべてが爽やかな緑の草原だ。そこに何の前触れもなく、白い霧のようなものが湧いてくるのが見えた。視界に広がるあらゆる場所から、霧はほぼ同時に現れ、あっという間に緑を覆い隠していく。僕はそれを丘の上から見ているのだが、白いクリームを気体にした様な霧は遠くから見ても極めて密度が高く、普通の霧とは違うものだとわかる。
「ここにいてはまずい」と思った途端、自分のいる場所の周りからも霧が湧いてきた。白くみっちりと詰まった霧に包まれ、僕の視界も白くなっていく。
「もはやこれまでか」と思う。


夢日記「レモンの道・大谷石の部屋」2020/06/27


 父と共に親戚の家に向かっている。
「今はあちこちにレモンが成っているはず」と、何気なく口に出したら、父は、そんなわけないとでも言いたげに、馬鹿にしたような顔をした。けれども荒れ放題の野道を暫く歩いていると、あちこちに実ったレモンが視界に入ってくる。低い木に成っているものもあるが、まるで地面を這っているかのような枝に成っているのも多い。随分大きなものから、ほとんど干からびかけているものまで、実際にレモンがこんな風に成っているところを見たのは初めてだ…。

 久しく訪れていなかった親戚の家に着いた。なんと曽祖父はまだ生きていて、有り余る財力で四畳半の自分の部屋を大谷石で総石造りにしていた。これは部屋というより一軒の家だ。「これは死んだらこのまま石棺になりますね」と言おうとしてやめた。分厚い大谷石の扉はオートドアなのだそうだ。


夢日記「駅」2020/06/27

 九州のどこか。
とても古くて小さな木造の駅。駅の造りのせいなのだろうか、なんとなく落ち着かない。改札には中年の女性駅員がいて、僕が改札に入ろうとすると切符を買えと言う。ここはお金は払わなくても良いのだと僕は思いこんでいたのだ。目立つところに切符の券売機があったので、そこで77円の切符を買った。改札で渡すと、駅員が
「他の方はどこにいらっしゃる?」と聞いてくる。自分一人なのだというと
「それは団体用の切符です」と言うのだ。
 少し気分を害したので買った券売機のところへ彼女を連れて行く。昔、薬局の前に佇んでいた家族計画の販売機によく似た年代物の券売機には、団体用の切符であることなど、何も書かれていなかった。内照式の四角い窓があるから、そこに書かれていた文字が長い年月を経て、徐々に消えてしまったのだろう。そんなやり取りをしているうちに電車は行ってしまったので、駅員室に入れてもらった。

 天井の高い駅員室には、駅員の知り合いと思しき年配の女性が座っていて、地方の美術展の図録を見ていた。そこには全く描いた覚えのない自分の作品が一点、見開きで掲載されていた。裸で病院のベッドで上体を起こしている女性が描かれたモノクロームの絵。細い筆かペンを使ったハッチングによる線を重ねて描かれた絵だ。自分の作品とは思えなかったが、とてもいい絵だった。図版の下に文章が書いてあり、その中に母という文字が読めた。絵に関してのエピソードのようなものが書いてあるようだったが、女性が手にしたままこちらにそのページを広げてくれた状態で見たから、細かいところまでは読む事が出来なかった。
「僕はそろそろ電車に乗ります。次の電車が来る時間、わかりますか?」と駅員に聞いたら
「そんなものわからない」と言われてしまった。




夢日記「軍服の女」2019/09/13

 でこぼこで雑草だらけの場所。軍服を着たロシア人の女が僕の目の前に現れた。睨みつけるように僕の目を見ながらハミングで何か歌っている。僕は足で地面を打ち鳴らし、その歌に伴奏のようなリズムを加えた。
 視界の端に領事館のような建物が見えて、その前を職員らしき白人男性が歩いている。

 (ここはもしかしたら共産圏?こんなところに居て大丈夫なのか?)

 「タタッ・タタッ・タタッタタッタタン」
 女は僕が足で地面を打ち鳴らすリズムにぴったり合わせ、僕を睨んだまま肩を前後に揺すりながら後ずさりしていく。休符のところでぴたりと動きを止めてくれるので、気持ちが良い。
 僕が追い詰めるようにして奥のプレハブ小屋に入った時、この展開なら狭いこの部屋の壁に張り付いた彼女にキスでもすることになるのだろうと、期待のような想像をしていたが、唐突に何かの現実的な邪魔が入って「ごっこ遊び」はお開きとなった。

徳永雅之 Masayuki Tokunaga
1960年 長崎県佐世保市生まれ 埼玉県桶川市在住
画家
http://www.tokunagamasayuki.com/