温泉ソムリエ的な・・・(3)

文 / 東澤一也

 温泉地で、混浴…と聞いて「え~やだあ~、混浴なんて、ムリムリ~~」って言うのはたいてい中年以降の年配女性に多い。いつの昔かオバタリアンと言われてた方々である。地方の温泉地へのお仲間旅行で混浴という案内を目にした時の反応であるが、混浴から何かしら妄想を膨らませてのお言葉と思える。彼女らに言いたい。「大丈夫ですよ!誰も見たくありませんから!」
 経験から言うと、温泉ブームの後、むしろ若い女性の方が堂々と混浴温泉に入って来ている。若い女性グループや若いカップル、若い単独女性にはちょっとどぎまぎするが出会うことがある。温泉好き女子にとって温泉は妄想の対象では無いのだろう。

 「混浴は文化だ」江戸期までの温泉地・公衆浴場は混浴が普通だったが、明治期になって別浴が徹底されるようになった。大勢が一堂に入浴するスタイルの日本の浴場で男女が真っ裸で居たなら当然ながら風紀の乱れが生じる。浴場で欲情である。
 しかし江戸期までは公衆浴場では男は褌、女は湯文字(ゆもじ・腰巻)を付けて入浴するのが一般的で、決して真っ裸で入っていたわけではない。それが近世になって衛生上の理由からそれらの湯浴み着や手ぬぐいを湯の中に入れないようにとなり、各浴場にはタオルを湯に入れないで、との注意書きが出されるようになった。つまり温泉に真っ裸で入るようになったのは歴史的には最近の事である。
 以降、混浴は禁忌的なもの、厭らしい響きを持つものと思われるようになった。

 しかし旅番組などで北欧フィンランド式サウナの中で家族や友人など老若男女が真っ裸で入っている様子を観たことがあるだろうか。実に和気あいあいとして楽しそうだ。そこには猥褻な厭らしさなど微塵もない。
 それを日本に置き換えるなら、風光明美な大露天風呂に家族や気の置けない仲間、または恋人と一緒に浸かり会話をし心身の癒しを求める。温泉好きなら温泉にも一緒に入ろう。垣根を取り払おう。と言うことになる。それが私の提唱する「混浴」のススメである。恥ずかしがることは無い。むしろ自然な形だ。ただし、タオル・湯浴み着はマナーとして必要だと思う。以下に私も行った混浴温泉を紹介する。素晴らしいところばかりなのでぜひ行ってみて頂きたい。

 長野市から行けるお勧めの混浴・貸し切り温泉!

【松川渓谷温泉滝の湯】高山村。超お勧め混浴
 高山温泉郷。山田温泉から松川渓谷沿いに車で数分。松川渓谷沿いに大野天岩風呂がある。男女別の内湯から混浴の岩風呂への出入り口があるので初級者向き。秘密のケンミンショーのロケで有名。

【七味温泉恵の湯】高山村。貸し切り
 白濁の硫黄温泉でお尻が黒くなります。日帰り施設で貸切風呂は家族・温泉仲間・カップルにお勧め。

【よませ温泉遠見乃湯】山ノ内町。貸し切り
 日帰り温泉施設遠見乃湯の貸し切り露天風呂。絶景が楽しめる。カップルにお勧め。

【鹿教湯温泉】上田市。混浴
 つるや旅館・河鹿荘・ホテル天竜閣。それぞれ違った趣の温泉で、湯巡りも楽しい。初級~中級者向き。

【葛温泉】大町市。混浴
 高瀬館・仙人閣。大町市街から高瀬ダム方面に車で行ける秘湯。広い混浴露天風呂は大満足。中級者向き。

【白骨温泉泡の湯】松本市。混浴
 超有名な白濁の露天風呂。湯に浸かると何をしてても見えません。男女別に出入り口があります。松本から車で1時間。初級者向き。

【新穂高温泉】岐阜県高山市。混浴、貸し切り
 奥飛騨温泉郷は日本有数の温泉郷であり、新穂高温泉は日本有数の混浴天国。川沿いの大露天岩風呂が多い。代表的な温泉は、水明館佳留萱山荘・槍見館・深山荘・山本館などなど。
 高速と安房トンネル経由で長野市からも充分に日帰り可。初級者向き。

【万座温泉】群馬県。混浴
 高山村から車で30分。長野市から意外に近い万座温泉。標高1800m雲上の混浴温泉。万座プリンスホテル・万座高原ホテル・湯の花旅館・豊国館。タオル着用OK。初級者向き。

【宝川温泉汪泉閣】群馬県みなかみ町。混浴
 混浴温泉、東の横綱。宝川の両岸に大露天風呂が点在。正に温泉公園。日本一200畳の露天風呂はあまりのスケールに圧倒されます。長野市から上信越道、関越道経由で3時間。または十日町、関越道経由で。湯浴み着用がルールなので初級者向き。

 ※混浴にはマナーがあります。先ず隠すべきところは隠す(顔では無い)最近ではタオル可や着用での入浴をルールにしている混浴も多いです。異性をじろじろ見ない。写真撮影は厳禁!などなど。
 文責は東澤一也個人にあり、温泉ソムリエ協会の関知するところではありません。
 温泉に関してご質問等ありましたらメールしてください。

東澤一也 Kazuya Higashizawa
1958年生まれ
温泉ソムリエ
kazuya@higashizawa.com