ハッキング

文 / 納和也

 ある夜山の中で急に炭水化物を食べたくなったらしい。湧き上がる火花も暗い白いものに取りつかれて寝るところがハッキングされたらしい。すべて事後的に情報が入ってきて途方にくれた。長いぱんを笛のようにくわえて食べたらしい。破っ棄ングなんて洒落てみてもハッキング。獣が現れたらしいが熊でもやってきたのかと平凡に思い無責任に本当ですか、凄いですねと軽くこたえた。何か他者の目が自分にむかって獣と言っていて意味が判らないので頭の医者に行こうかと未来を拵えながら日差しが高地に突き刺してきた。同伴者が具合が悪くなった。それこそ獣のせいかと何か韻を踏む事を行おうとしたがそのような事は出来ないほど具合が悪くなったのを見て僕も具合が悪くならなくてはと努力を行ってみたが自分は至って健康でそれが憎らしく憤りを覚え涙が流れなく平穏なこころもちで時を流して風呂に入るのが面倒ででも足が臭くあきれ果てた。
 お腹が出てきた。要するに肥ったということだ。ハッキングの時に起きたことがそのままお腹の肉として形になっていると母親からなじられてもふーんといった感じであったが最近朝コンビニエンスストアでドーナッツを食べないと気が狂いそうになる症状が現れている。遠い昔チョコレートスプレッドをでかいスプーンでぺろりといったらしい。これもハッキング効果らしくそらおそろしくなった。明日はドーナツを摂取するのをやめようと思っているが毎日そう思っているのである。ハッキングの恐ろしさと神経症的な心配をかかえて涙があふれたっどうしたらいいのかとしかし明日もドーナツを食べるだろうか僕がドーナツを食べて煙草を吸おうとしていると毎朝パーカーに包まれて帽子を被りガラけいを直視している女がいる。灰皿を僕から遠ざける位置に必ず女は居る。この女はコンビニで物は買わない。ただ車から降りてコンビニの灰皿の前でがらけいを見ている。僕はそのせいで煙草を吸いにくいのである 昨日もおとといも明日も僕の煙草の灰を受け入れる灰皿を遮断しているこの女。白いパーカーの背にはcontry womenと書いてある。僕に灰皿を使わせてお願いだから。コンビニに入ると店長は今日はドーナツを食べないのですかと攻撃をしてくるので先にこちらからチョコオールドファッション二つと義務的に口から溢れる。外に出るとガラけい女がパーカーを着て灰皿の前にいる。この女がいないコンビニの灰皿の姿が思い浮かばない。濃紺のダイハツミラから降りてそのまま灰皿の前に行く女。お願いだから僕に灰を灰皿を使わせて。ある夜山の中での獣は僕なのか?人は僕だと言う。しかし僕はハッキングされていたとしか言えない。灰皿女、獣、店長。出来事はそのまま円となり僕を形作る。やめてくださいと毎朝こぼれる。ハッキングは実は常なのかもしれない。ハッキングされて車で二十分かけて甘いものを求めてさまよう 母親は翌朝怒っている。リフレックス、クエチナピンとかがハッキングの権化であるがその名前を聞くと心が躍る、踊り狂いまくるもっともっと踊れと。パーカーの女よ、灰皿の前で下半身をさらけだし股間を灰皿に向けて火よ吹け、火よ吹け。僕はそこへ煙草の煙を入れてあげるから パーカーよパトカーではなくパーカー女よ聞こえるか?毎夜ハッキングされている。今晩も 獣が現れたらしい、僕はハッキングされているから記憶がない 地響きをたてていたという。   contry womenという文字を明日もみるのだろうか?普通に灰皿と繋がりたい。パーカー女よ場所をあけてくれ、たのむからお願いします。同伴者が具合が悪くなった事が気がかりである。気がかりという物は恐ろしい。それが妄想を呼び新たな世界が現れる。その変質凶にまみれた世界はとても狭くとても固い。僕はいくつもの世界に包まれている。明日はドーナツをたべるのだろうか?簡単な話そのローソンを素通りすればすべて解決するのだが一日の工程を変えるとすべてが狂う。だから素通りというのはとても難しいことである。人がこの世で出会う人間は前世で縁があるという。このパーカー女と僕は前世で出会ったのだろうか?遅刻が怖くて9時に向かえば良いものをこの気の小さい僕は遅刻を恐れてこのローソンに7時50分に着く。その時間の他だったらパーカー女と店長と出会わなくて済むのだろうか?しかし自分は小心者であるのでまたこのローソンに7時50分に着くのだろう。近い将来再び山へ行く。同じことをまた繰り返すのだろうか?

納和也 Kazuya Osame クリエイター
1971年埼玉県熊谷市(旧妻沼町)生まれ
http://osamekazuya.com

2015 8/22~10/25 D15 @FFS_lounge gallery
2015 9/20~10/25 naganoalternative @FFS