The Land With No Name

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文・写真 / 松田朕佳

ニューヨークからJet BlueでL.A. 友達のところにスーツケース預けてGrethoundバスでツーソンまで10時間。2、3時間の細かい睡眠のためシュールな夢の中を歩いているみたいな頭。隣の席のおじさんはアトランタまであと2日。ふらふらツーソンのバス停に降りたらケイトがもう待っていてくれた。朝ごはんにココナッツミルクのチャイとルービンサンドイッチ。ニューヨークは毎日目まぐるしくって息つく暇もなかったから久しぶりに息を吸った感じ。South Westの空はいつ来ても真っ青で大きくって何にもなかったみたいな顔で迎えてくれるから、ただひたすら脳天を開いて狭い頭骨の中で澱んでいた思考を放つ。スグワロウカクタスの様に背を高く花を咲かせて鳥にとまってもらったら、すっきりと目が覚めた。水と食材を買い込んで砂利道をトラックで走り、途中で見かけたガラガラ蛇にこんにちわって挨拶したらトグロを巻いて鎌首を持ち上げしっぽでガラガラいうので、さよならをして立ち去った。ウズラの親子やチップマンク、鹿のカップルを見かけながら辿り着いたThe Land With No Name。ケイトとテッドがこのSculpture parkをスタートしてから約10年が経ちパティオやコンポストトイレや、訪れるたびに進化している。「行き場のない彫刻の楽園」というサブタイトルつきのこの場所には3年前に私の作品の設営に来て以来だが、今回は大きなコンテナに泊まれるようになっていた。コンテナの側面が一面開くようになっていてスライドガラスが入っている。山を背にしたコンテナの中で夜、地平線と平行に寝そべり、海底のような地形と星を見渡しながら浅く眠った。次の朝起きて火を焚きメキシコ料理のタマレ(トウモロコシの粉で肉や野菜を巻いて更に外側をトウモロコシの皮で包んで蒸したもの)をフライパンで温めて朝食にした。「花に踊らされて、この震える不安定な大地の上で」というパフォーマンスをやってみた。これからテントを建てる予定のプラットホームが調度ステージのようになっていたのでケイトとそのインターンのハンナに切り花の茎を指に乗せバランスをとって踊ってもらった。砂漠の山を背景に花に踊らされる人の美しい写真が撮れて満足し、今回の目的であるペンキ塗りを終えて私たちは街に戻った。

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松田朕佳 Matsuda Chika 1983年生まれ 美術家 
NY滞在中
ビデオ、立体造形を中心に制作。2010年にアメリカ合衆国アリゾナ大学大学院芸術科修了後、アーティストインレジデンスをしながら制作活動をしている。

www.chikamatsuda.com