刺客の風景 レコンキスタ断片

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    写真:データ:<極東>Far East SCULPTURE

    タイトル:刺客の風景 レコンキスタ断片
    
素材:鉄鋼材 柳瀬荘の内部
    場所:柳瀬荘 埼玉県所沢市大字坂之下437
    第6回柳瀬荘アート・教育プロジェクト
    アウェーゲーム-茶碗に勝てるか-
    2014年10月9日(木)~11月2日(日)

文・写真 / 北澤一伯

 可塑性ということの傍近。掌の中で、求心的に空間を押し拡げて表面を拡大する行為、茶碗。粘土に限定するならば、物質内の無空にむかって量を押し込んで塊を成す彫刻。掌の内に満ちようとする空間と掌から外へむけて増減していく空間。
 道具になることではなく、道具とはいえないものへと変容する形象。そして、ジスクサンダーと砥石の先端で、私における固有時と固有地から両手によって生み出す仕事。それらの動きは、論理だけでは解釈できないが、掌の軌跡は可塑性によって辿られていく。
 柳瀬荘は、所沢市大字坂之下にある、実業家・茶人松永安左エ門(1875〜1971)の元別荘である。戦後GHQによる占領政策上、日本発送電会社の民営化が課題になると、電気事業再編成審議会会長に選出され、9電力会社への事業再編による分割民営化(九電力体制)を実現した人物だ。さらに電力事業の今後の発展を予測して電気料金の値上げを実施。消費者からも非難を浴びる強引さから「電力の鬼」と呼ばれるようになったという。また美術コレクター、茶人としても知られ、耳庵(じあん)の号を持つ近代小田原三茶人の一人でもある。
 そうした柳瀬荘の内部。斜月亭から久木庵につづく廊下から茶室へいたる畳の上に「刺客の風景 レコンキスタ断片」を設置する。
 アウェーゲーム -茶碗に勝てるか- 。
そして、3・11後の美術を考える。

北澤一伯 Kazunori Kitazawa
1949年長野県伊那市生れ
 
 1971年から作品発表。74年〈台座を失なった後、台座のかわりを、何が、するのか〉彫刻制作。80年より農村地形と〈場所〉論をテーマにインスタレーション「囲繞地(いにょうち)」制作。94年以後、廃屋と旧家の内部を「こころの内部」に見立てて美術空間に変える『「丘」をめぐって』連作を現場制作。その他、彫刻制作の手法と理論による「脱構築」連作。2008年12月、約14年間長野県安曇市穂高にある民家に住みながら、その家の内部を「こころ内部」の動きに従って改修することで、「こころの闇」をトランスフォームする『「丘」をめぐって』連作「残侠の家」の制作を終了した。韓国、スペイン、ドイツ、スウェ-デン、ポーランド、アメリカ、で開催された展覧会企画に参加。
また、生家で体験した山林の境界や土地の権利をめぐる問題を、「境(さかい)論」として把握し、口伝と物質化を試みて、レコンキスタ(失地奪還/全てを失った場所で、もう一度たいせつなものをとりもどす)プロジェクトを持続しつつ、95年NIPAF’95に参加したセルジ.ペイ(仏)のパフォーマンスから受けた印象を展開し、03年より「セルジ.ペイ頌歌シリーズ 」を発表している。その他「いばるな物語」連作、戦後の農村行政をモチーフにした「植林空間」がある。