公園の住人

matsudachika11

文・写真 / 松田朕佳

連続性の無い毎日にふと不安になって117に電話をかけて時報を聴いていた。宇宙船で無線越しに聴く北極海のクジラの脈拍みたいだ。
明け方の夢で 幽体離脱してから今朝目が覚めるまで、私は自分の身体を両腕で抱えていた。ぐったりとゴムのような身体の、体積は変わらないが重さはいつもの半分くらいで残り半分は抱えている方の私が持ってる訳だから、抱えている方の私にはいつもと変わらない負荷がかかっていた。瞬きをしない目は焦点を遥か遠くに合わせているようだった。首筋に苔が生えていることに気がつく。赤や緑や、きれいな海藻。フジツボのような口からぶくぶく気泡を噴き出した。せっかく幽体離脱したのに自分の身体からは結局そんなに遠くに離れることはできなくて、離脱しきれなかった心残りがありながらも目覚めたときに私は一人で身体の内側にいたのでほっとしたのだった。
最近よく心理学者や心理カウンセラーに行き会う。白黒は目覚めている間の残り物だけど、カラーでみる夢はビッグドリームといって、あなたにとって重要なものだから分析するといいわよ。と聞いた。たまに身体から離れそうになるのにいつも寸でのところでしがみついてしまう。未練や不安が沢山ある。「世界に私は何か期待されていたかったんだよ。でも世界は私に1ミリも期待していなかったことが分かって、がっかりしていただけなの」と、丸くなって腐っている私に、「きみがやりたいようにやればいいよ。やらなくちゃいけないから、なんてことはないんだ。でもたまには世界がきみに何かしてもらいたいと期待してくれることは素敵だよね」酔っぱらいのいうことはいつだって正しい。彼が此処に住んでいるのか、と訊くので、このベンチには今本を読んでいる間座っているだけです、と答えた。あなたは此処に住んでいるの、と尋ねると、そうだという。どのくらい?二ヶ月。噴水もあるし太陽もあるし、悪くない。エナジードリンク飲むか?いらない、そっち頂戴。別の住人がマッチを借りに寄ってきて会話がオランダ語になったので私は一服してそのベンチを後にした。
ところで「突然現れて」と言うのはきみの勝手だけど、わたしはずっとここにいた。のんびりしている間に冥王星が太陽系から外されていて、気づいた頃にはどこにも行けなくなっていた。このままずっとこうしていたら、いずれ死ぬ頃には地球人のように白骨になるのだろうか。

松田朕佳 Matsuda Chika 1983年生まれ 美術家 
長野市在住
ビデオ、立体造形を中心に制作。2010年にアメリカ合衆国アリゾナ大学大学院芸術科修了後、アーティストインレジデンスをしながら制作活動をしている。

www.chikamatsuda.com

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