2014・夏の日記

tamurayukiko10

文・写真 / 田村侑子

行く手の視力と、記憶の波。
前と後ろのようでいて
あたまの中でまあるく編まれている。

揺らめく感覚をするすると泳がせ、
9年と数ヶ月の時間をかけて
通り抜けた光景、衝動、感情、言葉。
その間
藁半紙は茶色く褪せて、
ペンのインクの油は滲み出ていた。
そこに漂う青がきれいで。

しばらく忘れていたけれど
長野の夕暮れ、山の端が蒼く染まるのは
ほんとうに綺麗。
深呼吸すると透明になっていくよう。

ひぐらしが鳴いて
変わらぬ空気がそこにいたとき

明日がやってくる気配、を
もっと新鮮に感じ取らなくては、と思った。

当たり前、ではない
時間が いま 流れているということ。

2014年・8月。長野にて。

田村侑子 YUKIKO TAMURA
1986年東京生まれ
長野県駒ケ根市で育ち、新潟市在住
印刷会社勤務

2009年〜 新潟市、名古屋市にてグループ展に参加
2014年  新潟市にて個展
写真と絵

yukk_te@yahoo.co.jp