高架下トンネルの存在意義

kimuranatsue09


文・写真 / 青野まつり

ボタボタと傘に音を立てて雨が降る中、コンビニに向かって歩いていて、途中でいつもの高架下のトンネルに入った瞬間、ふと楽な気持ちになった。
なぜだろうと思うと、それはトンネルが雨から私を守ってくれたからだった。
また、きつい日差しの真夏日にも同じようにトンネルに入ると、また楽な気持ちになった。
トンネルが直射日光から私を守ってくれたからだった。
でも私は、毎日通勤で電車に乗り、そのトンネルを踏みつけて走っている。
トンネルは上の電車を支え、下を通る人を守っている。
でもトンネルの中は、形状が崩れ、踏み潰されて何かわからないゴミが端に散らばり、明かりも無く真っ暗で、陰鬱な空気で満たされている。
せめてその中で子供達が遊んだりでもすれば、楽しい空間になるのかもしれない。
ある日、雨の中、どこの縄張りにも入れずに公園の葉っぱの下で雨をしのいでいる猫がいた。
あのトンネルに行けば守ってもらえるのに、と思った。
私はトンネルの役目を意識して以来、通る度に何となく上を見上げるようになった。
そうすることで、トンネルに「私は気づいてる」と伝えられる気がしたのかもしれない。

青野まつり Matsuri Aono
1984年生まれ
クリエイター