バスマニアによるバス研究 vol.001 長野駅→善光寺大門

文・写真・マップ / 納和也

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参道を走るいすゞLV218、この車両は戸隠登山用高出力車両。参道を走るバスは行き先によって車両が異なる。戸隠へはワンステップ、ノンステップ車両では底を擦るので運用できないのでツーステップ車両が担当している。ワンステップ、ノンステップ車両は市内線、主に、若槻、宇木、専光寺大門でのみ運用になる。エンジンの音もそれぞれ異なる。戸隠線車両は高出力のV8エンジン仕様。観光、高速クラスのスペックである。しかしミッションはトルク重視になっておるのでスピードは市内線のレギュラーサイズエンジンと変わらない。長野駅から善光寺大門までこの車両に乗ってみる。バスを外から眺める事は多いが乗るのは久しぶりである。乗らないとバスそのものの魅力が薄れるのは正直なところである。

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長野駅よりいすゞLV218に乗車。久し振りに乗るバスである。バス独特の匂いが鼻に入って来た。シートの乾いた匂いと微かに香るエンジンの匂いである。忘れていた体感が蘇る。ギアの機械音も聴こえる。左側最前列は前輪の真上である。運転手は前輪より前で運転をする。コックピットが前輪より前というのは不思議な感覚である。トラックは前輪の上にコックピットがある。現在長野駅はバスロータリーを改修中。なので駅前でのバス撮影を出来ない。完成すると駅前は二階構造となりる為にバスは下側に入る予定。なので暗く以前のように撮影が今後出来ない。長野バスターミナルで撮影するしかないようだ。駅から延びる道は4車線である。駅発のバスが多くここを通る。まずは駅からチャイムとともに発進する。リアからは力強いトルクフルなエンジン音が床に響く。きしむボディと共にゆっくりと。二車線の狭い参道へ右折しすぐに千石入口のバス停がある。

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右折後すぐに一個目の停留所、千石入口。千石劇場という映画館、古い喫茶店他駅前の繁華街がある場所である。ここで降りる人はいないが乗り込む人は多い。ここは市内北西、北東へ向かう路線が停まるバス停である。以前はバスに急行の扱いがあり、急行は当停留所には停まらなかった。写真の通り狭い二車線の参道、大型バスがぎりぎりの幅で走行し始める。ギアチェンジを小刻みに行い停止、発進を行う。車両後部より聴こえる地を這うような渇いた加速音が心地よい。

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錦町の交差点。歩行者が多く横断する場所。いすゞLV218のフロントガラスは一枚仕様、左右のサイドウインドウから些細な人の動きが見える。通称キュービックと呼ばれる本車両ならではの眺めである。分る人にしかわからない喜びが湧きあがる。引き続き幅が狭い参道の為、横断歩道にて横断する歩行者が多いので右折、左折する為に停止した乗用車を追い越すのも難しい。始めから難航した道路環境である。ここを市内、山間部へ向かうバスが多く運行している。路線によっては全てが狭い道を運行する場合もある。

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二個目の停留所、かるかや堂前。昭和通との交差点、もんぜんぷらざがありトイーゴも右に見える。この交差点は路線車両に加えて高速車両も走行する。道路事情によりすれ違い、路上駐車車両をよけながら数センチの幅をあけてスリリングな感覚が僕をしびれさせる。

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昭和通との交差点を超えると道は石畳に。ここから完全歩行者優先の道路になり運転にもさらに細かい配慮が求められる。石畳による揺れをエアサスがしっかりと車両を支える。「ごとん、ごとん」と。発進、停止が多くなりエアー音の音も頻繁になり始める。余談であるが、現在市内線で運用されている日野HUは日野車両はフィンガーコントーロールにエアーを使用しているので低速発信時のギア変速時には日野独特の「ぷしゅーぷしゅー」という音が聴ける。過去は登山系の車両は日野だった。今は市内線に日野車両、登山系がいすゞで反転してしまっている。それは日野で現在山岳で使える車両はレインボー、セレガになるがそれ以外の現在運用しているタイプの高出力というのは無いので安心感のあるいすゞ車両になるのは妥当なのであろう。アルピコ交通の車両はほとんど中型ではなく大型が多い。ミシミシと石畳を揺れながら動くバス。ついこの前では日野HUが多かったがやっと排出ガス規制にあった三菱エアロスターが都営他から中古で導入しているので市内線では今後三菱ふそうが主流になりそうである。

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長野の繁華街、権堂。八十二銀行の前が停留所。長野オリンピックの閉会式が行われたセントラルスクエアー跡が左に。ここら辺は信号が小刻みにあり道は常に渋滞している。多数のバスが難儀な形で走行する。乗用車は停止、発進する大型バスを無理な追い越しを仕掛けるので、発進のタイミングが難しそうである。歩行者も飛び出したり自転車も多く走る。バスはギア比によりトルクが高く発進時にデリケートなアクセルワークが求められる。昨年より歩行者優先に整備された参道には以前と同じように乗用車、配送トラックと狭様々な車両が多く存在する。停車中の車の追い越しも簡単には出来ない。その中を大型バスも運行する。市の参道に対する意向と実際の交通事情は大いにかけ離れているのが分る。

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停留所、大門南で降り歩いて善光寺へ行く。この先はさらに狭い道へバスは向かう。善光寺の西側のさらに幅の狭い一車線道路を90度右折する。そのまま地響きを立てて傾斜のついた道を進む。その後善光寺を後にして住宅街の若槻、宇木他へバスは進む。生活路線と観光路線を兼ねた路線である。

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いすゞLV218の後ろ姿。V8エンジンのトルクの利いた低温がリア部分から響き渡る。戸隠登山用の車両は現在、山陽電鐡道から定期的にこのタイプが導入されているが今後車両が尽きた場合はどうなるのだろうか?可能性としては松本電鉄で新車導入された登山仕様ハイブリット車両、日野KC-RU1JMCH、日野U-HU2MMAH_10523が担当するのだろうか?すでに今年に入り何回か戸隠登山をしているのを見た事がある。または現在市内線で使用している日野レインボーのツーステップ車両を回すか?以前日野RTが戸隠営業所にあった。日野RTは小型エンジンを縦置きにした車両である。小型の為に常にエンジンは高回転で走行する。その高回転の音はマニアの間では有名な独特の音である。その小型エンジンを搭載した経緯としては今後の電気モータとの連携を念頭に置いた仕様であり日野の前衛の程が伺える。モーターがあって成り立つ小型エンジン。さらに希少な登山仕様のツーステップのハイブリット車両は松本電鉄でのみ導入されている。また現在登山の主力いすゞLV218も山陽電鐡道でのみ導入された希少車両である。両希少車両を出来るだけ集めてこの先2。3年は凌げるのだろうか?バスは単純に鐡道では走れない場所でもっとも大きな役割を果たす。傾斜の多い山岳用車両が現在新車でラインナップがないのは問題だと思う。力がある高速用車両だと坂は上るが狭い道は走れない。結局は現在ある車両を治しながら運用にあたるしかないようだ。

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アルピコ交通株式会社 長野支社 長野営業所主任の齋藤勇太さんに参道区間についてインタビュー
■長野駅から善光寺までの路線について
長野駅から善光寺大門までは一律150円です。歩き、ちょっと疲れたら気軽に乗れる、ペットボトルのお茶と同じ価格で快適に過ごせます。この路線は善光寺往復便「びんずる号」をはじめとして若槻地区、宇木、戸隠、鬼無里へ向かう路線が集中する区間です。最近ではレトロ調の車両も投入し県外からの観光の方にも親しんでもらうよう施策を行っております。
参道での路線のバスの役割として歩行者のアシスト的なものがあります。
善光寺までの参道は登りになるのでまずはバスで善光寺大門まで行き、そこから仲見世を歩き善光寺を参拝してゆっくり下りながらの散策がおすすめです。
■長野駅から善光寺までの路線の現実、参道イベント時でのバスの利用
イベント時は路線部分が歩行者天国となります。その中で気軽に早くたどり着けるバスの走行レーンがない為迂回運行となります。迂回部分から参道への誘導が難しいのが現状です。
県外から方が新幹線から降りて折角バスに乗っても迂回路から参道へスムーズに向かえません。
唯一「善光寺花回廊」時はバスレーンが設定されております。ですので長野駅からのアクセスはスムーズになっています。
■高速バスと路線バスの関係
高速バスの売り上げと自治体の助成金によって路線バスの運用費を賄っているのが実情です。助成金は多く利用しているお年寄りにとっての交通機関である路線バスにとって重要な役割で無くてはならないものです。それは福祉そのものなのです。近年ツアーバスでの低価格の高速バスを運行する会社が増えております。それによる競争を強いられる事により肝心の路線バスの運行にまでその余波は及びます。路線バス、高速バスでは快適性、安全性は常にコンディションの良い車両で可能となります。ツアーバスは規制により日和見的に消えてしまう可能性がありますが、専門的に路線を持続するアルピコ交通では先の事も考えての安全な運行を維持しなければなりません。その為には新型の車両は不可欠なのです。
■乗りやすさと環境
アルピコ交通では早い時期から上高地でのバスに始まり積極的にハイブリットバスを導入しております。山間部という厳しい環境ですがこういう場所でこそハイブリットバスは使われるべきものです。
■子供を対象にした交通教育
子供は乗り物が好きです。車両に関して大人より子供が先に興味を持ちます。試みとしては幼稚園、小学校での交通安全教室にバスを提供し運転席からの眺めを体感してもらったり、ハイブリットバスの仕組み、効果を楽しく理解してもらう事などです。
■バスそのものの交通文化の構築
鉄道はすでに交通文化として成立しておりますが潜在的にバスに興味を持つ方々はいますがまだ成立しておりません。
「バスまつり」はその形を成立する試みになります。今後「バスの運転体験」、「歴史的車両の資料の作成」などを行うことによってバスファンの定着が必要です。ファンがいることによって交通文化としてのバスが成立します。それはバス事業にとってもおおきなメリットがあります。
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環境にもお年寄りにもやさしいハイブリットノンステップ車両、日野ブルーリボンシティHM-HU1JMEP。

納和也 Kazuya Osame クリエイター 1971年埼玉県熊谷市(旧妻沼町)生まれ
http://osamekazuya.com