わたし

文 / 矢野耀子

数年前、暇そうにしている父に、写真撮影なんか趣味になるんじゃないのと思い
「趣味でも持てばいいじゃないの。」と、古いフィルムカメラを渡し、自分がカメラの使い方をひと通りレクチャーした。

説明が終わった後、
どれ。と、試し撮りで私と飼い犬の写真を数枚撮った。

どうせ、面白くもない写真が撮れてるんだろうと思っていた。
しかし、現像してみると、ちょっとびっくりする絵が撮れていて、フムムと思った。

何の事はない、構図も糞もないただのスナップ写真なのだが、
何だか、私と飼い犬の関係性がきっちりと画面に収まっていて、
これ以上でもこれ以下でもないなぁというジャストな点がきっちりと収まっている。

父にしてみれば、娘と飼い犬というかなりジャストな被写体なので、それが写し取れるというのもまあ納得なのだが、それにしても本当に屈託のない写真が撮れていて感動した。

普段、仕事や趣味の写真などでも、つい何かを作ろう作ろうと過剰にいきり込んでしまいがちなのだが、意識しないほうが良いのだなと思わされた思い出である。
しかし、意識しない様にしないとねということをまた意識すると言うことの繰り返しになるんだろうなあ、キリが無いのだなあと、思った。

矢野耀子 Yoko Yano 1978年千葉県生まれ ウェブデザイナー 東京在住