インディア

文 / 納和也

轟「おー!どうしたの?」
M「久々に来たよ」
轟「上の店行った?」
M「行ったよ」
轟「何飲む?」
轟「アーリータイムスは?」
M「それじゃないな」

轟「俺さ、毎日かっぱ寿司いってんだよ」
轟「話すと長いんだけどさ」
M「話せよ」
轟「かっぱ寿司がさ旨くて安いから完璧なんだよ、他で食べる必要性が全くないんだよ、だから毎日かっぱ寿司」
M「何か食べたいな、おむれつやってないの?」
轟「いや、やってないよ。俺ストイックだからね、ここじゃ作れないんだよ。何せ飯はかっぱ寿司だからね。自作の曲唄っていいかな?何せ俺ストイックだからさ、客がひいたら上の店でおむれつ作るからさ、上の店にギターもあるからさ」
M「唄えよ」
轟「俺ストイックだからさ、声がちゃんと出るんだよ、最近の若い連中はさ、声が小さいんだよ、俺、声出るからさ、PA使うとハウっちゃうんだよ、ちょっとまってて」
轟「そうそう、原発反対の唄があるんだよ、あと千九百八十七年に作ったチェルノブイリの曲もあるよ」
M「じゃぁ、それ唄ってよ」
轟「うん、あ、これレゲエだった」
M「レゲエか?」
轟「二コードの曲なんだよ、拍子はね三拍子なんだ、あれ?そうだったかな」
轟「俺、二コードで曲作っているんだよ」
M「早く聞かせてよ」
轟「リズムはレゲエなんだよ、あれ、ラップだったかな?」
M「普通に唄ってよ」
轟「ラップがないと普通にはならないんだよ」
M「なんでラップなんだよ?」
轟「この曲はレゲエだからさ」
M「だから普通に歌えよ」
轟「じゃあレゲエでいくよ」
M「普通にしてよ」
轟「いいよ、だけどラップがないとだめなんだよ」
M「なんでラップなんだよ?、普通にやれよ」
轟「じゃぁ普通にやるよ、レゲエでいい?」

M「そこどうしたんだよ?」
轟「話すと長くなるんだけどさ。おやしらずがうんじゃってさ。あ、俺歯医者にはいかない主義なんだよ」

M「何か作ってよ」
轟「じゃあ、俺、今度ピザ始めたんだよ」
M「釜はあるの?」
轟「ピザ釜?オーブントースターで焼くんだよ、シャープ製の」

  轟:インディアマスター轟氏 
  M:町田哲也氏(各位敬称略)

私は千九百七十一年に熊谷市(旧妻沼町)で生まれた。そこで幼年期を過ごす。親父の転勤で東京都足立区千住に住む。畑の中を通学していた田舎者、東京の密集した千住は戸惑いばかり。友人の家に行くと殆ど親がいなくて生活感のない殺風景な木造アパート一部屋。
慣れる前に予定より早く親父の脱サラの人生、三十五歳、お袋三十三歳で当時流行りのペンション経営する為に長野市へ。
僕は都会から豪雪の中の通学に泣き寂しさ、厳しい自然の中での生活が始まった。
高校を卒業し、スタジオ3に行く。産れて初めて落ち着く場所を得た。しかしその落ち着く場所は一年,再び東京へ。とても苦しくてここでも結局は馴染めず寂しさばかりの東京の生活が始まった。

納和也 Kazuya Osame クリエイター 1971年埼玉県熊谷市(旧妻沼町)生まれ