Hellertownの思いで -1-

文 / 山上晃葉

NYからほど近く、バスで1時間半ほど走ったところにHellertownはあった。
近くにはでっかい Wendy’sと大きな看板と高速道路しかみあたらない。
だだっ広い駐車場におろされて一人迎えを待つ。
空は晴れ渡っていて視界は広い。
しかし、ものすごく、寒い。
体の芯が冷えかけた頃、迎えの車がやってきた。
クリストファーの車に乗り込み大通りを走り出す。
車のヒーターに体がゆるんでいく。
空は急に曇りだし広々と広がる風景をより不思議なものにしていった。
ぽつんぽつんと点在する家と広大な平原を私はぼーっと眺めていた。
しばらく走ったところでクリストファーが
「いつも通りすぎてしまいそうになるんだ」と笑いながら車が1台通れるほどの脇道に入っていった。
そこを抜けた先に私がこの4日間滞在するのであろう可愛らしい2棟の家がみえていた。
大きな敷地には白い柵がたっていて6頭の馬がこちらをみている。
私は絵本にでてくるような風景を目の前に、一瞬自分がどこにいるのかわからなくなってしまった。
(車のヒーターで頭もぽーっとしていたのかもしれない)
車を降りると空気は しん と静まっていて息ぐるしいくらいきれいなことがわかった。
ここでどんな時間を過ごすことになるのだろうか。
胸が高鳴るのを感じた。

つづく

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山上晃葉 Akiha Yamakami
1984年長野市生まれ NY.Brooklyn在住
美術作家
身体をモチーフに版画や布を用いて立体作品を制作。国内外で発表を重ね、数年前よりダンスとのコラボレーションを始める。自らの作品を”ソフトスカルプチャー=柔らかい彫刻 ”と呼び、ダンサーの衣装なども手がける。
2009年多摩美術大学大学院絵画専攻版画研究領域修了

http://akihayamakami.com