ペン戯作派宣言

文・絵 / たかはしびわ

 我は数年来、全人類を全ペン類に置き換へ「ペンギン戯画」と自他共に称す芸風にて制作し居り。

 奇抜なるアイデアやパロディ的アイデアや何でもなき日常の可笑しきことに関したるアイデア等、兎に角アイデア重視のペンギン戯画は、歴史的には十返舎一九の「東海道中膝栗毛」等の洒落や滑稽や趣向を重んずる戯作、歌川国芳による擬人化したる猫、に連なるもの也。

 ゴオグやムンヒに憧れて画家を目指したりし我なれど、我が絵は戯画なりて、そもそも油絵を描き初めし二枚目の作にて、野菜を描きたるに擬人化し「野菜家族」と名付くる戯画的発想を既にしたり。さらに指を鼻の穴に入れ耳に鉛筆を刺し頭に鉛筆の箱を乗せたる自画像を描きたり。

 かかる事実を鑑みるに、我が資質は戯画に在りと覚ゆ。

 戯作の精神を復活さすべしといふ「新戯作派」(無頼派と呼ばるること多し)の一人太宰治の作品はどれも面白きものばかりなりしが、悲惨陰惨と言はるる「人間失格」も又ユーモアとペーソス溢るるどこまでも可笑しき作品にて、同様に戯画・戯作の精神を現代に甦へらせユーモアとペーソス溢るる作品を目指しゐたる我は差し詰め新戯作派ならぬ「ペン戯作派」とでも申すべきか。

 が誰もペン戯作派を知る者無之(これなく)、たかはしびわの名を褒め讃うる者さらに無之(これなし)。

「ひとりでは大家のような気で居れど、誰も大家と見ぬぞ悲しき」(太宰治「あさましきもの」)


よいではないか 毛糸のパンツバージョン

たかはしびわ Biwa Takahashi 画家 1972年東京都生まれ 長野県在住 長野二紀会会員 日本ペンギン党党員 1997 武蔵野美術大学油絵学科卒業 2006.7~ 『週刊さくだいら』にて『さくだいら美術探訪』隔週連載(2008年7月から4週に一度の掲載)2007 信濃毎日新聞短歌欄イラスト担当
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