マリオネットオペラ

文 / 徳武安紀子

自分は、いったい何をやりたいのだろう?
と思うことがある。

私は今、仕事の合間をぬって「マリオネットオペラ」をやっています。
オペラの物語をマリオネットで演じ、その場その場に音楽を織りまぜる。
ミュージカルのように、せりふから続いて歌や演奏になる時、とても興奮します。
昔々の人々は、きっと思いのたけを語っているうちに自然とそれは、詩となり歌となり踊りになったんだろうな・・・・・と。

そもそもの始めのきっかけを書きます。
子供のころ、学校で音楽の時間に先生がレコードをかけてくれた。
「この世に、こんなきれいな曲があるのか?!」とおどろいた。すごく感動した。
ペールギュント組曲の中の「朝」だった。
同じく「オーセの死」をかけた後に先生が、「これは不良になった息子が、放浪の末帰宅すると、母が死の床に瀕していた時の曲だ」といった。又又、私はびっくりした。
「クラシックの曲に物語があるなんて!?」
全部を知りたかったけど、先生に聞く勇気はなかった。
高校の時、音楽の先生から買っていた音楽雑誌に、ある時ペールギュントの話が出ていた。
私はそれから、何度も何度も頭の中でシーンの組み立てと登場人物のシュミレーションをした。
ペールギュントは私の特別な物語になった。

実際に舞台にのせたのは、町の文化祭で中学の演劇部の子供と、近所の主婦をむりやりかき集めて作った音楽隊でやりました。
私は、回り舞台の制作に、演出に、と走りまわった。一週間と一ヶ月の感覚がわからなくなるほど、混乱と不安の日々だったが、ぶっつけ本番はしかし、なかなか好評だった。
が、もっとちゃんとやりたくて、それとヨーロッパのピクニックコンサートをやりたくて、7-8年後この企画をもって、市内の音楽事務所をたずねました。
「スコアを輸入して、オーケストラを派遣して、オペラ歌手を頼んで、舞台美術を発注して、、、etc ざっと見積もって700万円は最低でもかかりますね」

そこで、私は縮小することを考えた。
オーケストラのかわりに知り合いの“音楽のできるプロ・アマの演奏家”、オペラ歌手のかわりに“あやつり人形”を、と。
私の中で、一番小さくした型だった。

やってみたらこれはすこぶる具合がいい。
舞台が小さいから何でもできる。(考えていたことの半分もできなかったが)

700万円かかるところ、まわりの皆の協力と寄付金10万円ちょっとで、200人の観客を熱狂させた。ーーこれは本当です。私の自慢です。ーー
これは大変な自信になる、実績になる、ステップアップして続けて大きくできる、と信じていた。
が、現実はそーではなかった。
なぜか・・・? 
それを書くには勇気がいる。私には才能も、実力も、積み重ねた努力も、人望もなかった。
ひらめきがあっただけ。
でも、それも、これも、わかった上で、はいつくばるような思いで次の年、「くるみ割り人形」を成功させた。そして・・・今も・・・まだやっている、失敗の山を築きながら。

わたしは、なぜやっているのだろう・・・?
音楽でも、絵でも、話でも、映像でも目に耳に飛びこんできたものに、・・・ン?!と思うと、そしてそれが偶然に、必然に重なると、いきなりひらめく!!思いが、想像が、むくむくと広がる。この瞬間がものすごく楽しい。
自分の現実は見なかったことにして、唐突に声をかける。
「〜〜やらない?}
あーまた言ってしまった。

町田哲也氏の作品とちらしを見て又ひらめいた!
−ピノキオ?!−
今夏のコンサートで、ただ「表紙が青い」というだけで小道具に使った本が「ピノキオ」だった。
カンニングペーペーをはさみながら拾い読むと、ディズニーではないピノキオ。
ドキッとするほど暗いシーンもあった。
何かが心の中でゴソッと動いた。
誰にでもあること、珍しくもない。
でも・・・・・
そして又、再び「ピノキオ」がやってきた。
このあいだの“ゴソッ”が“ゴロリ”と動いた。

今度会ったら言ってしまいそうだ。
「ピノキオとマリンバやらない?」
何ができるだろう?と思うとやけに楽しい。
背景画だけでなく、造形、映像、他広く自由な舞台美術に興味のあるかた喧嘩しながら楽しみながら一緒にやりましょう。

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2013年以降、いいづな山妖精協会主催コンサートの予定

○ギリシャ神話星座のコンサート(仮名)
○一人マリオネット 「私たちのそして私が愛したヨハネス・ブラームス」(仮名)
byクララシューマン
○マリオネットシアター「真夏の夜の夢」(メンデルスゾーン)
○一人マリオネット 「くるみ割り人形」(チャイコフスキー)
〜クリスマスイブに妹におこったふしぎな話〜 byフリッツ・シュタールバーム
○マリオネットオペラ「ペールギュント」(グリーク)
○マリオネットオペラ「椿姫」(ウ゛ェルディ)

徳武安紀子 Akiko Tokutake 1955生まれ
明治学院大学卒業劇団民衆舞台所属30才で飯綱町に転居
料理店アリコルージュ開店現在にいたる。
欧風家庭料理アリコ・ルージュ restaurant haricot rouge
電話026-253-7551