呼吸

文 / 山本正人

時々、隣のベッドから長男の声が聞こえる。
それは、嫌な夢を見ているのか、おしりの気持ち悪さからか、お腹が減ったからか。
不安になって、その都度息子を見にいく。
生まれて一月も経たない赤子の挙動は、私にとって大きな心配事の1つ。

妻は、何事もなかったように、寝入っている。
落ち着かずに妻を揺すり起こすと、「大丈夫だよ」と一蹴。

私は息子の胸に軽く手を当て、寝顔に耳を近づけて呼吸を確認する。
寝息を聞くことで、安心する。

上の娘2人が生まれた時も、
同じようにしていた自分を思い出す。

そういえば、私が小さい頃、
死ということに恐怖を感じて寝付けないことがあった。
幼い私が「死ぬとどうなるの?」と聞くと、母は「心配しないで寝なさい」とだけ。
不安で仕方なかったが、母に寄り添っているとそのうち眠りについていた。

我が子に同じことを聞かれたら、なんて答えよう。

私は今、人から人へのタスキリレーの真っ直中にいる。
私が生まれてきたのも、この為だったのかとさえ思う。
そのタスキはどこへ繋がっていくのか。
ゴールはあるのか。

一つ分かることは、目の前の子供達は私にとって守らなければならない存在。
子供達が、たくさん喜び、笑い、哀しみを経験し、さらに大きな感動を知ること。
そのために存在する。

今日も昼間、娘達は、
アイスクリームを取り合い、喧嘩していた。
その仲裁に入りながら、娘達の言葉、行動を噛み締める。
食べ終わる頃、
2歳の次女が「みんなで食べるとおいちーね」といった。
私は心から頷いた。

山本正人 Masato Yamamoto 1976~
群馬大学教育学部卒 長野市在住 土木関連業務