夢日記

文・スケッチ / 徳永雅之

1/29 2017 「レコンキスタ」
 夢のなかで、突然「レコンキスタ」と言う言葉が浮かぶ。


4/12 2017 「シルエットの男」
 自分で車を運転してどこかへ向かっている。佐世保から諫早に行く時の風景を更に広く、美しくしたような景色。大きなアーチの橋を登る。標高が高く、まるでジェットコースターのような視界だ。降りかけた時、向こうから一人の若い男が登ってくるのが見えた。橋の下は水を張ったようにキラキラしていて、逆光に照らされた不思議で美しい眺めだ。僕は右のポケットからiPhoneを出し、シャッターを押した。なんとか間に合った。男がいい感じで画角に入った。

6/14 2017「バイトたちと」
 さほど広くない、古そうな作業場でバイトたちの到着を待っている。そこは一本道の車道に面していて、片側はそう高くない並木が続いている。彼らが近づいてくると、地図上でその位置が光って表示される。バイクに乗った若い男の子が到着。素直そうな青年。次にきたのはノーヘルで、頭に丸いツノがあった。一瞬、インターネットで見た、人体改造によるツノを持った、いかつい外国人の男を連想してしまったが、よく見ると小柄ですごく気の強そうな女の子。ツノに見えたのは髪の毛だった。彼女は着くなり「うわ、この粉(埃?)ダメだわ!」と大声で不満を口に。だが次の瞬間、彼女はテキパキ動き出し、いつの間にか全体的に作業が始まっていた。作業台は何故か30度ほどの傾斜があり、その上に段ボール箱が乗ってるのだが、その傾斜の意味が僕にはわからない。その方が何か効率的なのか?そもそもそこで何を作業するのか、僕にはよく思い出せないでいるのだが。


6/16 2017 「アマナのクロッキー教室」
 アマナがさいたまのビルの一階でクロッキーのレクチャーをやっていたので、覗いて見た。部屋は暗く、二箇所に大きな鏡が貼ってある。手前の方では立てた鏡の前で馬の首に見立てた、銀色というかメタリックなテープを絡めて作ったようなオブジェを数人が動かしている。奥では舞踏会にでも出そうなドレスを着たアマナが、タップダンスを踊るように、実にリズミカルに足を動かして馬が小走りに歩いている様を表現していた。スポットが彼女の足元に当たっている。バラバラに演じている首と前足を、それぞれ奥中央の壁に投影して一つの画面にしているようなのだ。僕は会場にそっと入り、彼女に気づかれないようにそれを見ている。演技が終わり、ドレス姿のアマナが隅から出てきて、満面の笑顔に照明が当たった。そこにいる人たちの集中力にも感心しながら、そのアイデア満載の教室が素晴らしすぎて、軽くショックを受ける。


6/26 2017「時代劇」
 僕は時代劇の中にいる。女が低木の中に立っていて、その前に自分がいる。僕の後ろに知らない者が二人ほど居て、その一人は武士か浪人風の男である。今自分が居るのは、どうやら 離れ離れになっていた乳飲み子と女が再会する感動のシーンのようだ。女は嬉しそうに着物の襟をはだけて乳房を露わにした。豊満、そして「母の乳房」 だ。僕は思わず女にしがみつき、乳首にしゃぶりついた。乳首は少し大きめで、存在感がある。後ろに居る侍たちの視線を感じたので、彼らに向かって、「これはつまり、僕は赤ん坊の視点になっている訳です」と説明する。なんだかすごい理屈で言い訳をしてるな…と思いつつも、白い胸はまだ目の前にある。


7/18 2017「社会保障」
 運転中、後部座席に乗っているアーティストA君が「これで随分良くなったな…」とつぶやいた。 両手を頭の上で組み、妙に深刻な顔をしている。「何が良くなったの?」と聞くと、こちらを横目で見て「社会保障ですよ」と、ちょっと面倒臭そうに言った。彼が居たはずの後部座席には女性のアーティストBさんが座っていて、A君は後部座席の、更に奥の座席に移動していた。「ふーん、社会保障?」僕がそう言うと、二人は顔を見合わせた。どうやら共通の認識を持っているようだ。「僕はよく知らないんだけど、それが何のことなのか、良かったら教えてよ」というと、(そんなこと知らないの?)とでも言いたげな仏頂面のA君とは裏腹に、Bさんはニコっと笑い、無言ではがきサイズのクロッキー帳を僕に手渡した。それは縦位置で使われ、開くと上のページに既成の小さいカレンダーが貼ってあり、下のページに日付入のスケッチが描かれていた。スケッチは短い時間で描かれた感じのもので、少し色も入っていた。彼女はちょうどグループ展をやっている最中なので、その展示の作品と関係有るのかもしれないと、カレンダーと日付とを確認するように何度かめくり直して見てみた。あまり関係は無さそうな印象だったので、そのことを彼女に質問をしたいいところで目が覚めてしまった。


7/21 2017 「スリッパ」
 行ったことのない家に滞在している。古く、昭和の時代に建てられたような家。中は結構広そうだ。一緒に泊まっている友人もいるが、知らない人ばかりだ。中庭に面した廊下に木製の靴箱が置いてある。靴を置くところが斜めになっているタイプだ。靴箱の上には誰かの飲みかけのジュースやコーラなどが置いてある。靴箱にはスリッパが入っているのだが、僕の目の前で、見えない手によって綺麗に揃ったまま、上に、下に、何足ものスリッパがものすごい速さで場所を移動されているのだ。魔法のよう。真っ昼間だというのに不思議なものを見てしまった。この家のことを知ってそうな女性が居たので、今起こった不思議な事を伝えなければと近づいた。「この家には幽霊が居るのですか?さっきあそこのスリッパが」彼女は驚きもせず、いつものことだというような顔をして、短い言葉で説明してくれた。飲みかけのジュースはそのためのものだったのか。玄関に、旅行者とみられるアジア系の女性たちが入ってきた。ここは旅館だったのだ。


8/4 2017「幽霊の統計」
この場所で友人が遭遇したという幽霊の話をMさんにした。
「ここで人がどんな幽霊を見たのか、の統計としては、女性を見たという人が☓人、子供を見たという人が☓人…」
彼は真面目に、淡々と説明してくれた。

4/26 2016 「目を切られる男」

 世の中がすっかり軍国主義のような雰囲気になってしまった。1人の男が色の見え方について上官の気に入らないことを言ってしまったようだ。その結果、その場で、男は片方の目を刀で切られるという事になってしまった。目を切る任務を与えられたものは、切られるものへの礼儀として、目を背けず、切り口をしっかりと見なければならない。そんな酷いことをする役目が僕にも回ってきそうな気配だったが、そんな事は僕には到底できることではない…。仕方がない、僕は、動かないように男を後から抑えている役をやることになってしまった。手元にあった、何かの広告が印刷された紙を男の顔に当て、彼が寄りかかっている、人の背ほどの高さの丸太ごと、後頭部まで回しこんだ。「ヤーッ!」と刀を振る偉ぶった感じの軍国男。刀が当たったようだ。僕は目をつぶったままだ。「これで終わりか…」と思ったが、どうやら軍国男の刀さばきはかなり未熟で、一度では上手くいかなかったのか、 その後も二度、三度と切りつけるのだった。切り口は当然、酷い事になっているはずだ。軍国男が「すまん!…見れない!」と謝るのが聞こえた。下手くそな刀で何度も切られ、その切り口を見ることも拒否されてしまった哀れな男は、絶望の声で「(僕を)退学にしてくださいっ!」と叫んだ。僕はこの光景を見ないようにして、その場からそっと立ち去った。

徳永雅之 Masayuki Tokunaga
1960年 長崎県佐世保市生まれ 埼玉県桶川市在住
画家
http://www.tokunagamasayuki.com/

トポス高地2017
徳永雅之展
2017年9月1日〜9月30日
@アリコ・ルージュ

個展
10月11日(水)〜18日(水)
ギャラリー枝香庵 
https://echo-ann.jp/