日記(8月13日)

文 / 疋田義明

お盆に入り、母と妹と祖母の家に向かった。祖母の家は、僕の家から車で30分程したところにある。祖父は亡くなっていて、祖母が一人で暮らしている。車を走らせ祖母の家の近くまで来たところ、車道の真ん中に3つの塊が転がっていた。近くで見たところ、獣の死体のようだった。黄土色に焦げ茶の毛の間から淡いピンクと赤の鮮やかな肉がこぼれていた。
祖母の家で、祖母を拾い、車で祖父のお墓に向かった。空には灰色く雲が重なり覆っていて、時折、パラパラと雨粒を落としていた。お墓に着き、本格的に雨が降る前にと、母と祖母が
勢い良くお墓をタワシで擦っては水で流していった。僕もチョロチョロとたわしで墓石の隅の角っこを擦っていると、いつの間にやらタワシの先に何匹かの蜘蛛を絡めとっていた。まだ1ミリにも届かないか位の小さな体で、生まれたばかりのようだった。墓石の角っこをよく見てみると、1センチメートル程の白い繭のようなものが いくつも引っ付いているのを見つけた。どうやら蜘蛛の卵のようで、それをタワシで絡めとったようだった。何とはなしに、地獄に垂れ下がった一本の蜘蛛の糸が頭に浮かび、掃除を躊躇っていたが、最後にはほとんど洗い落とされたようだった。
お墓参りも終わり、帰る頃。丁度、溜まっていたものが溢れだしたように雨が強くなってきたので、急いで車に乗り込んで帰ったのだった。

疋田義明・Hikita Yoshiaki
1992年生まれ
長野出身
無職