「声」/クラフトペーパーに色鉛筆、スタンプインク/15×15㎝/2017年
文・作品 / 寺澤真佑美
小さい頃。私は自分の言葉で説明することが上手くできなかった。
思っていることを声に出すことが、とても怖かった。
小学生になって、作文を書く授業や宿題の時は頭の中が真っ白になって鉛筆を持った手が動かなくなる。
どういうことを喋ったり書いたりすれば怒られないんだろう、正しいんだろう。
いつも、びくびくしていた。
小学5年生の時に足を怪我して、松葉杖を使うことになる。
一人で出来ないことが増えてしまい、自分から声をかけなければいけなかった。今まで話したことのないクラスメイトと、初めて会話することもあった。
次第に、思っていることを言っても大丈夫なのではと思うようになっていった。
時々、言葉を上手く扱えなかった小さい私と目が合う。小さい私は困った顔をして、こっちを見ている。
「わたしは大丈夫だよ」と微笑む。
すると、小さい私は安心した顔でどこかへ去っていく。
頑張ってくれてありがとうね。去っていく後ろ姿に、そっと伝える。
大人になれば、怖いものはなくなって楽しく生きていけると思っていたのに、辛いことはなくならない。
今でも、上手く言葉に出来ないことはある。
言葉にならない、言いたいけれど言えないこと。声みたいな、声にならないものが幾つもあって。それらを描くことで、生きているのかもしれない。
寺澤真佑美 Mayumi Terasawa
1984年生まれ
アーティスト
日々の生活のなかでマイペースに制作している。
〈今後の予定〉
「ちいさなアート展 vol.3 in New York」
2017年10月26日~29日、11月4日~11月5日 @Studio 34 Gallery(アメリカ、ニューヨーク)
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