The Child is father of the man


文・フライヤー / 平松良太

ジョン・クランコに捧げた2015年のレコーディングの翌朝、祖母はこの世を去った。
数々の金言を残してくれた祖母の喪失は、閉じていくはずだったアルバムの結末に少なからぬ影響を及ぼした。
そしてその数か月後、祖母と同じ名前をもつ女の子が生を受ける。
新たな“Grandmother”の誕生だった。

 

「3」はこの10年を支えてくれた人たちと共にある。
彼らは私の先生だった。
そして、彼らは私たちの未来であり過去だった。

彼らの名を借りて曲を作る事を試みた。
出来るだけ簡潔に、
しかし、新鮮さを失わないように。

できた曲を3つ4つ並べてみると、それぞれのキャラクターが浮かび上がり、
幼い頃に擦りきれるほどに聴いていたレコードの感触を思い出した。
チャイコフスキーの「くるみ割り人形」
魂を吹き込まれた人形たちの踊り

 

そして、この作品にもっとも適したピアノに出会う。
スタインベルク
比類なき美しさ。凛とした輪郭。
雑味なく果てしなく伸びていく音。

操いは一際難しい。
まだ弾き慣らされておらず、未完成な部分もたくさんある。
どの楽想を弾くにも熟練が必要だった。
思うに任せず収められなかった曲がいくつもある。

しかし、それでも、その作業は楽しかった。

 

My heart leaps up when I behold
A rainbow in the sky:
So was it when my life began;
So is it now I am a man;
So be it when I shall grow old,
Or let me die!
The Child is the father of the Man;
And I could wish my days to be
Bound each to each by natural piety.

William Worthworth

 

月並みだが平凡であることを大切にしたい。
それ以上でもそれ以下でもないものを
それが唯一の方法と信じる。

 

平松良太 Ryota Hiramatsu
作曲家・ピアニスト
1976年生まれ
千葉県在住
http://www.ryota-hiramatsu.com

Solo Live Tour 「3」
04.02 / at Shinshu Kokusai Ongakumura (Ueda,Nagano)
03.30 / at Space Y (Niigata)
03.28 / at Musicasa (Yoyogiuehara,Tokyo)
03.26 / at L’AUTRE MAISON Nishinohora (Tatebayashi,Gunnma)
03.25 / at Nardis (Kashiwa,Chiba)