温泉ソムリエ的な・・・(2)

文 / 東澤一也

 「美人の湯」って聞いたことがありますか?ここ何年も温泉ブームが続いていてテレビの番組欄や雑誌でも温泉特集は毎日のように載っている。その中でも特に女性にとって目を引くのが「美人の湯」というフレーズだろう。
 はい。その名の通り。入れば誰もが、桐谷美玲か綾瀬はるか。はたまた新垣結衣か石原さとみ。誰もが美人になれる、そんな魔法のような温泉を紹介しましょう。

 日本三大美人の湯として知られるのは、川中温泉(群馬)・龍神温泉(和歌山)・湯ノ川温泉(島根)で、それぞれが美人の湯と謳い人気の温泉となっている。ところが、誰がいつ頃、この三泉を選んだのかはまったくの謎である。天下の三名泉(有馬・草津・下呂)は由来がはっきりしていて、室町時代の文献に記されており誰もが認めるところであるが、それに対して三大美人の湯の方はこのような明らかな記録が見あたらない。
 さては、土用の丑の日のうなぎやバレンタインデーのチョコレート、近年の恵方巻きのように誰かが考えた商業戦略だろうか!温泉列島日本!実のところ三大美人の湯以外にも美人の湯を謳う温泉は全国に多数ある。ならば日本中が美人だらけになるはずだ。でも実際はどうだろう・・・それなりだ。看板に偽りありということだろうか。やはりどう考えても美人の湯に入ったからといって、おかずクラブが北川景子になれるはずはない。そこで温泉ソムリエの登場となる。

 温泉ソムリエ的に言うと「美人の湯」は「美肌の湯」となる。基本的には「乳化作用」によって肌の表面を溶かし、角質を取ったり毛穴の汚れを取ったり、またメラニンを分解して美白肌を育てる効果があるなど、「ツルツル&美白」が得られる温泉のことだ。前回お話した温泉分析表から美肌効果が期待される泉質とは・・・。

 「炭酸水素塩泉」(クレンジング効果)、「硫酸塩泉」(肌の蘇生効果)、「硫黄泉」(シミ予防効果)を『三大美人泉質』と呼んでいる。そこに、pH7.5以上の(弱)アルカリ性の温泉も美肌効果があることから「(弱)アルカリ性単純温泉」(クレンジング効果)を加えて、「四大美人泉質」とも言う。また、アルカリ性温泉は別名、ぬるちゅる温泉とも言う。

 ただし、美人泉質には落とし穴がある!クレンジング効果が高い美人の湯ほど、入浴中は潤っても、入浴後は乾燥しやすいのだ!お肌が乾燥しやすい方は入浴後の保湿剤によるお手入れをするか、保湿効果のある塩化物泉での仕上げの湯浴みをお勧めしたい。

 とにかく温泉に入ったら必ず温泉分析表とにらめっこをすることをお忘れなく!

 それでは美肌効果のある温泉をいくつか紹介しよう!(長野県近辺)

【炭酸水素塩泉】
白馬八方温泉・小谷温泉・熊の湯ほたる温泉・湯田中温泉・軽井沢温泉・佐久小海・乗鞍高原白骨温泉・木曽温泉・妙高赤倉温泉郷(新潟)・嬬恋村の温泉(群馬)・飛騨高山温泉郷(岐阜)

【硫酸塩泉】
秋山郷・野沢温泉・渋湯田中温泉郷・蓼科温泉郷・下諏訪温泉・赤倉温泉(新潟)・草津伊香保温泉(群馬)

【硫黄泉】
野沢温泉・山ノ内温泉郷・高山温泉郷・戸倉上山田温泉・別所温泉・穂高温泉郷・乗鞍高原・白骨温泉・昼神温泉・妙高赤倉温泉郷(新潟)・草津温泉(群馬)・飛騨高山温泉郷(岐阜)

【アルカリ性単純温泉】
白馬八方温泉・美ヶ原浅間温泉・上諏訪温泉

 次号は興味津々「混浴温泉」のお話。

東澤一也 Kazuya Higashizawa
1958年生まれ
温泉ソムリエ
kazuya@higashizawa.com