KC-LV218L

osamekazuya17

文・写真 / 納和也

 戸隠線で標準的な山陽電鉄のキュービック。メインの運用は戸隠線。車体メーカーはIKコーチ、シャーシはいすゞ。元山陽電鉄で使用されていた車両。神戸の坂道を運行する為高出力V8、8PEE1-Sエンジンを搭載。最高出力285馬力を発揮。先代のU代では6RB2、275馬力。最近では小排気量6気筒エンジンでギアのトルクを太くして登坂するのが主流だが1990年代のKC代ではエンジンの馬力で登坂していた。ボディーを見ると関西特有の前後扉。関東では中扉が主流。KC代は1990年代の規格なので現在では廃車が進んでいる。走行音は重低音の効いた大型観光バスと同じ音を発する。他KC代ではツーステップバスが主流だったため現在の路線バスより車高が高い。そのメリットは大きく山間部の上りカーブで底を擦らない事があげられる。ワンステップ車両では車高が低いため底を擦る事がデメリットとなる。1970年代からのモノコック、ツーステップはどのような道路状況でも対応が出来、山間部に住むお年寄りの為にもなるのは皮肉な話である。しかし現在お年寄りの為にバリアフリーが主流となり車高の低いノンステップしか作らない。都市のお年寄りであれば良いだろうが。度重なる排ガス規制、バリアフリーという時流によってバスのありかたが現在混乱の一途を辿っている事は否めない。個人所有のバスは現在でも生産されている。しかし路線バスはバリアフリー法によりワンステップ、ノンステップしか生産出来ない法規制がある。KC-LV218Lのような車両は確実に現在でも多くのニーズがある。少し無理すればお年寄りでも乗る事が出来る。現に過去モノコックツーステップバスに山村のお年寄りは乗っていたのだ。日本は狭く山間部も多い。ヨーロッパのようにノンステップで済む環境ではない。KC-LV218Lを出来るだけ延命して戸隠線で運用している現状は良いとは言えない。LV218Lの後継車種いすゞエルガも初期はV8、8PEE1-Sエンジンツーステップがあった。だが2000年を越して発売期間半年でエルガV8、8PEE1-Sエンジンツーステップは生産中止となる。その時の排ガス規制はKLである。川中島バスではワンステップのエルガV8、8PEE1-Sエンジン搭載車を購入したが七曲りで底を擦る事と、ミッションとエンジンの相性に問題があり戸隠線での運用と取りやめた。本来都市部には地下鉄がある。しかし山間部には無い。バスは地方でこそ活躍する公共交通機関であると改めて考える今日この頃である。

納和也 Kazuya Osame クリエイター
1971年埼玉県熊谷市(旧妻沼町)生まれ
http://osamekazuya.com

2016年8月 ナガノオルタナティブ2016_02「ランドスケープ」納和也