文・宮澤織江 / 作品・宮澤郁江
今年の春は曇り空だった。
やっと長野の桜が満開になった頃、
私の恋が終わった。
社会人になってからは、始まりと終わりが分からない。
社会人1年目の頃、
グレーゾーンが増えることは大人の証だと思ってた。
本当にそうかな?
終わりを告げた日は、
目が腫れない程度に泣いた。
翌日には、友人に思いの丈を話して、
完全に『過去のもの』とした。
友人と思い出を照らし合わせてみると、
多くのことを忘れていることに気付いた。
あんなに大好きだと思っていたのに、忘れている自分が悲しかった。
翌々日には、達成感と開放感でご機嫌な自分がいた。
あんなに苦しんだのに、ご機嫌すぎる自分がまた悲しかった。
誰かと共存することは労力がいる。
労力をかけ続けると、それが習慣になり、
愛着や執着がわいて大事なものになる。
それから、お互いに幻想を抱いたり、現実に引き戻されたりの繰り返しだ。
誰かに労力を注ぐことって、自分の生きる価値を見出す作業でもある。
生きる力になる。
ある程度の依存関係は
幸福感を味わう為の1つの方法だ。
私も十分それを味わった。
けれど1人になって、自分の心を感じることも同等の幸福感がある。
この2つの幸福感は相反する。
誰かと共存したい気持ちと、
自由への欲求は折り合いがつけられるのだろうか。
そんなことを思うと、
やっぱりまだ苦しい。
宮澤織江 Miyazawa Orie
宮澤郁江 Miyazawa Ikue
1984~鹿児島県生まれ
長野市在住
会社員
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