洋楽とカツカレー(何も考えてない男たちの肖像)

文 / 納和也

先日テレビを視ていたら井上揚水がいた。ビートルズに影響されて音楽を始めたという話。「そういってもね、彼ら英語で唄っているから僕はビートルズは実はよく解らないんだな」と笑っていた。唄のほぼ表層だけの部分だけに影響を受けさらに英語で何を歌ってるのか全く興味のない感覚が面白いなと思った。井上氏の歌のどこにビートルズの影響があるのか僕も解らない。先日テレビを視ていたら蛭子能収が旅に出ていた。海岸に行っても魚を食べずカツカレーを食べていた。旅のレポートのセオリーをことごとく破壊する蛭子能収。「特産だから食べてね」と言われるのがやなんだな。と言っている。カツカレーが好きなんですか?→いやそうでもないよ→そうなんですか→でも肉がすきなんだよ→揚げ物が好きなんだよ→カレーが好きなんだよ。だからカツカレーはそんなに好きでもないんだな。蛭子能収談。井上揚水は本当は音楽がそんなに好きでないんだなと視える。それでいいんだな。ふたりともとてもふざけた男。僕もビートルズが何を歌っているのか知らないし、詩が売りのボブディランなど到底手が届かない。でもそういう方向性のボブにビートルズのジョンレノンは詩だけでは歌にならないからと説教したらしい。だからと言ってジョンレノンが素晴らしいのかよく僕は解らない。井上揚水の氷の世界を改めて聴いてみる。何も考えてない男がそのまま歌ったように聴こえて面白い。乗り継ぎ路線バスの旅で行き先を尋ねるため営業所に行くと蛭子能収は「営業所の人たちは皆嘘つきなんだよ」とそのまま云う。編集でオミットしない姿勢に力づけられる。何も考えてない事、何も考えてなくて何が悪い?

納和也 Kazuya Osame クリエイター
1971年埼玉県熊谷市(旧妻沼町)生まれ
http://osamekazuya.com