ドラムサークルの案内役?ファシリテーターの動き方

文 / 塩津知広

 楽器を使ったおしゃべり大会、とでも言うべきか、ドラムサークルでは数々の楽器がいろんな音で一斉に鳴っています。この状況は、さまざまな土地のさまざまな言語が(”方言”も含めて)同時に発せられているに等しい。そんな中では、こちらが発する言葉も無力です。
 実際、ファシリテーターはほとんどしゃべりません。耳よりも目、聴覚よりも視覚にうったえて「私がみなさんの案内人です!」と自己紹介します。大きな動作はその現れなのです。

 円く座ったみなさんの中心に立ち、誰にでもわかる動作をします。本当に『だれにでも』です。老いも若きも紳士も淑女も邦人も異邦人もゆりかごから墓場まで(は言い過ぎか?)、見てすぐわかるサインです。
 単純に音を大きくとか小さくとか、これは方の高さに真横に両手を広げてそれを上げ下げすることで示します。
 ある一定の間隔で強い音を鳴らしてほしいときには、そのタイミングで大きくジャンプして大ゲサに着地します。
 テンポが早くなりすぎたりボリュームが大きくなりすぎてコントロールできなくなるのを防ぐために、時々は気持ちを落ち着かせるように手のひらを下に向けて軽く叩くような動作もします。

 けれど、いつもサークルの中心にいるわけではありません。むしろ、必要なときにその場所に入るだけです。居続けることは「”私”は指揮者、”みなさん”は演奏者」という関係を強く意識させます。「次にどんな”指示(命令)”が出るのか?」と”待ち”の姿勢にさせてしまいます。支配するのは本意ではなく、”みなさんのドラムサークル”をつくるのが目的なのです。コミュニケーションの材料を提示するにとどめるためにも、中心にいる時間はほんとうに最小限に抑えるべきなのです。

 以前に「楽器それぞれの奏法を説明はしない」と書きました。しかしそうはいっても『生まれてはじめて見る物体』や『実物にははじめてさわる』のかもしれません。困ってるような人はいないか、探しながら先の動作を行っています。
 もしそんな人を見つけたなら、寄り添ってカンタンに持ち方や構え方を示し音を鳴らしてみせます。時間はかけません、一瞬です。キッカケがあればそこからは参加者ご自身の『おしゃべり』が始まるからです。
 また、私が示す代わりに「あの人のマネをしてみて」と同じような楽器を持った他の参加者を指し示すこともあります。これでその人とのコミュニケーションが始まる準備もできます。

 空いているイスがあったなら、座っていっしょに楽器を鳴らします。「私も、みなさんといっしょです」と態度で示します。ドラムサークルを司っているように見えてしまいがちな”ファシリテーター”ですが、特別な存在ではないことを理解してもらえたなら、ドラムサークルはとても楽しいものとなることマチガイなしです。
 私はよく自分を「楽器を持ってきたただのオジサン」と自己紹介します。本当にそうであれたなら、それが目指すべき”ファシリテーター”なのです。

 さて、でも、飽きさせないためにはいろいろとネタが必要です。参加者みなさまが、見てすぐわかるカンタンなサインでは満足しなくなってきた頃合い、”ファシリテーター”は少しずつ”考えさせる”動きになってきます。

 続きは次号で紹介します。
 拙文、駄文、お読みいただきありがとうございました。

塩津知広 TOMOHIRO SHIOTSU 1965年福岡県北九州市門司区生まれ 長野県長野市在住 音楽講師 
1990~音楽教室講師として活動開始
2006年~「ドラムサークルながの」発足
drumcirclenagano@gmail.com
ドラムサークルながの