文・スケッチ / 徳永雅之
1995年9月1日 「変わった楽器の夢」
陶器で出来た初めて見る楽器は幅15cmに満たない厚みのない箱のような形。白く、滑らかな表面には植物をあしらった意匠が施されている。上部には箱の幅とぴったりの立方体が7、8個並んでいてそれを上に引っ張ると和音が出る。立方体は紐かワイヤーで本体と繋がっている。左から順に引っ張ると有名なクラシックのフレーズが奏でられるようになっているが ある順番で引っ張るとどこかの国の民謡か、大衆歌謡の曲を奏でることが出来る。
2002年4月17日 「へんないきもの」
田舎道を歩いていると、道から一メートルほど低くなっている赤土の空き地に変な生き物がいた。巨大なサンショウウオのような色と質感。手足はあるのかないのか解らない。二匹もいる。写真を撮った。変だ。変だ。そこに農家のおばあさんがやってきた。おばあさんは赤土の窪みを降りていって生き物になにやら話しかけたと思うと自分の服をめくりだした。「私がやらにゃ、お腹をすかせるから、こうやって血をあげるのさ」僕に向かってこう言ってる側からおばあちゃんはまとわりついた二匹の生き物に血を吸われている。何だか見てはいけないものを見てしまったような気持ちになり、そこを去った。
2002年10月23日 「無題」
何かを探して歩いている。
2007年7月11日 「黒い川」
暗い雨が降る日、僕は川越から車を走らせ家に帰っていた。がっちりとした鉄の骨格をまとった橋を渡る頃には青白い街灯の光が並んでいた。しばらく走ってから、なぜかまた川の向こうに行きたくなり、気づいた時には川岸に近いところに立っていた。橋は無かった。びたびたと降る大粒の雨の音は密になり、言いようの無い音の塊となって僕を囲んでいる。目の前に流れている川は一つの街が隠れるくらいの幅になってしまっていた。普段よりずっと遠くに街の灯りがこうこうとしていて、橋を飲み込んでしまった黒い川を照らしていた。僕は飽きもせずにそれをぼんやり見ていたが「ここにいては危ない」と自分の中の声が言ったので車に引き返す事にした。
2008年8月26日 「自転車」
晴れ渡った空。山の中腹に白い百合が咲いている。「この上まで自転車で走ると凄く綺麗だよ」白い百合が道沿いにびっしり咲いている風景が目に浮かぶ。太陽は少し傾いていてコントラストの強い影が百合を中心とした風景をより美しく見せている。そうだった、うちには自転車が無かったのだと気付く。
2012年5月 「貝」
工業系の男子校生に取材をしている。かたつむりとある種の貝の違いについて二人の男子が語ってくれている。それはその貝の器官を使って小便をする時の話だ。巻き方が微妙に違うので加減を間違えるとあふれてしまうらしい。彼らの先生も間違えて溢れさせたと学生の1人が言った。
2012年12月 「質問」
「僕はいつもこうやって歩いてるんだけど、この歩き方で正しい?」って誰かに聞いている夢
2013年4月1日 「飛ぶ女の絵」
僕がノートに描いたイラスト。海面すれすれを飛ぶ女性の絵で、ページを何枚か使って連続したシーンを描いている。ページの端っこに最近ビートルズは聴かなくなったという友人のIが「ディア・プルーデンスの気分になってるので」という言葉と、僕が描いた女性の少し後に同じように飛んでいる女性が彼によって描き加えられていた。
2011年5月 「バイオリン」
友人のミュージシャンN君の弾くバイオリンのフレーズに重ねるように弾こうとするのだが、演奏するのは久しぶりだったのでついて行くのがやっとだ。おまけに弦と弓にべったり付いた紺色の絵の具が照明や体温によって粘度が増し、余計に弾きづらくなってる。後半、詰め込むように倍のリズムで弾き始めたら横にいたもう一人の男が「やりすぎ」と目と口の動きでそれを制した。
2011年10月23日 「大学生になる」
僕は大学生になっていた。学校は全て木造の古い建物で学生数は多い。広々とした教室に入る。古いガラス窓から町を見下ろせた。もっと近づいて更に下を見下ろすと朽ちた書物のような質感の不思議な形の建物がある。窓際に長いテーブルが1~2個分並べてあり、そこに様々な資料と思われる本が平済みになっているのだがその全てに網がかけてある。授業が始まると、学生達は一斉にその網を少しだけ持ち上げて中の本を取り出した。僕もそれに習って一冊取り出してみた。授業が終わってから職員の女性と立ち話をした。僕のバンドのベーシストの事を彼女は知っていた。彼は世界中にファンがいる有名な詩人なのだと、それを初めて知り驚いている僕に当然のような顔をして語った。
徳永雅之 Masayuki Tokunaga
1960~ 長崎県佐世保市生まれ 画家
1985 東京芸術大学 美術学部絵画科油画専攻 卒業
1987 東京芸術大学大学院美術研究科(修士課程)壁画専攻 修了
http://hotrats.sakura.ne.jp
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