文・写真 / 山上晃葉
部屋に通されたあと早速ダンスのスタジオをのぞいてみた。
そのスタジオはなんと馬小屋の二階につくられており、そこに行くためには馬小屋を通らなければならない。干し草と馬のにおいを胸いっぱいに吸い込み階段を上がって行くとそこには真っ白い空間が広がっていた。大きな窓から入る太陽の光がなんとも不思議な雰囲気を作り上げていて、ここが馬小屋の2階だなんて忘れてしまいそうだ。
ダンサーの動く音と作品に使われる音楽があいまって ぴん とした空気を作り出す。
何かを生み出す場所はいつも心地よい緊張感が存在している。
身体を使う表現者と一緒にものをつくる時、特にそれを実感する。
自分だけでは緩んでしまう糸が気持ちよく張っているのを感じるからだ。
ここ、何年かの間でいろいろなダンサーの方と一緒に作品をつくってきた。
彼らに共通しているのは踊っている時の人格と普段の人格が少し違っていること。
普段はたいていみんな穏やかでフレンドリー。
しかし、いざ踊るや否や目つきは変わり鋭いまなざしと動きで私を魅了するのである。
やはり踊りとはトランス状態であり、人の通常の意識とは異なる感覚なのだと思う。
解放であり、エネルギーそのものであるのだ。
今回始めて会ったダンサーたちもそんな感じだった。
もっと彼らと作品をつくりたいと感じさせる魅力的なダンサーとの出会いは私の意欲をいつも高めてくれる。それらダンサーにもらった力を”衣装”という形に変換させて返すというやり取りをもう少し続けてみようと最近思っている。
つづく
次回にてHellertownの思いで最終
山上晃葉 Akiha Yamakami
1984年長野市生まれ NY.Brooklyn在住
美術作家
身体をモチーフに版画や布を用いて立体作品を制作。国内外で発表を重ね、数年前よりダンスとのコラボレーションを始める。自らの作品を”ソフトスカルプチャー=柔らかい彫刻 ”と呼び、ダンサーの衣装なども手がける。
2009年多摩美術大学大学院絵画専攻版画研究領域修了
http://akihayamakami.com
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