言葉のゆくえ

文 / 西達也

「言葉は、発した途端に受け手のものになる。」
ある本を読んで痛感したことなんだけど。

例えば、AさんとBさんがいるでしょ。

Aさんは「好きです」、とBさんに伝えたとする。
その瞬間に、その言葉はBさんのものになる。
なるほど、確かに。

こういう場合どうしてもAさんが主役になりがちだけど、
Bさん目線で見た場合、Aさんに「好きです」と言われた。
「好き」のボールはBさんに投げられたことになる。

そしてBさんは考えるよ。
「好きです」って言われたーって。
どうしよって。
まぁ、Bさんも嫌な気がしない場合は、
「やったー!」なんて感じかもしれないけど、
Aさんに対してそんな気がそもそもない場合は、
「えっ!?」なんていう驚きや戸惑いを感じるかもしれない。

そう、
だから、その言葉をBさんが期待していた時とそうでもない時で展開はガラっと変わるよね。
早い話がAさんの片思い的な場合と両想い的な場合で、
この物語の展開は変わってくる。

だから、Aさんの投げた「好き」の言葉って、
受け手が欲しいと思ってる時、思ってる人、に投げれば効果は抜群。
投げたボールをしっかりと胸の真ん中で、グローブの真ん中で、
いい音出しながら、ときには笑顔で「よっしゃー」とか言ってキャッチしてくれる。

「言葉は、発した途端に受け手のものになる。」
でも受け手に興味や関心がない場合は、その言葉は一体どこに行っちゃうんだろうね。

Aさんに戻ってくるのか、Bさんの中に残るのか。。
はたまた、とんでもないGさんなんかのところにいきなり行っちまうのか。
話があらぬ方向にいって、Gさん登場なんて事もないことないか。。。

それはそうと、これを書いていても同じことが言えるなぁ。

あ、西達也の書いたエッセイだ!どれどれ読んでみよう!
なんて人がどれほどいるか。
たぶん、おそらく、僕がもっと活躍人で、著名人で、全国区とまではいかなくても、
そこそこ名が知れてる人だったら、それだけで読むような人もいるんだろう。

そう、だからAさんは自分をもっと知ってもらうような努力をすることも大事。
そして、AさんがBさんに「好き」をしっかりと伝えるには、
お互いの関係性やタイミングも大きく関わってくる。

「伝えたい事を伝えたい人にしっかりと伝える」
「発した途端に受け手のものになる言葉」
これ、言葉だけじゃなくて何にでも当てはまるような気がするなぁ。
広告やアートや、なんなら子どもの勉強にも、夜7時のNHKニュースにもね。

僕はこの冬独立します。
あ、これ本当です。
予定より少しだけ早いですが。

西 達也 Tatsuya Nishi 1974~ グラフィックデザイナー
長野市戸隠生まれ/戸隠在住
東京の印刷会社、プロダクションを経て2011年帰郷
2012年冬より独立兼FlatFileスタッフ
nishi24tatsu@true.ocn.ne.jp